『狼になりたい』浜辺のウルフが単独ライブに懸ける想いとは?
10月30日・31日、浜辺のウルフが3回目となる単独ライブ『狼になりたい』を開催する。3人(+α)の脚本家を迎え、各々が書いたネタを浜辺のウルフが演じるという、今までにないスタイルのライブ。ロリィタ族。との結婚や、出産を間近に控え、公私共に転機を迎えている浜辺のウルフ。芸歴21年目に差し掛かった男は、何のために狼になろうとしているのか。ライブ直前の心境を語って頂いた。
―――今回が3回目(の単独ライブ)になるということで、まずは「どのようなライブなのか」を伺いたいと思います。
基本的には、長くても10分いかない短いネタをいっぱいやるライブにはなると思うんですけれども、今回は初めて、「他の方にネタを書いてもらう」という試みをやっています。具体的な内容としては、SFの好きなメンバーが集まったので、割とSFネタが多い感じになりそうです。
去年(の単独ライブ)は、賞レースに気持ちが向いていたこともあって、「R-1ぐらんぷりで使えそうなネタが作れたら良いな」と思ってネタをやらせて頂いたんですけど、今回はもう全然賞レース向けじゃないネタで攻めようと考えています。言ってしまえば、かなり自由度の高いネタが多いです。
―――今回はご自身でネタを書いたりは?
一応僕も書くんですけれども、パーセンテージ的には僕のネタはそこまでありません。
ライブ終了後に「このネタの脚本は誰」というのは、多分バラすと思います。これはまだ完全に決まっていはいないんですけど、エンドロールで言うか、アフタートークもある予定なのでそこで言うか、っていう感じですかね。
―――面白い試みだと思います。「今までないことをやる」という意味では、今回の単独ライブはウルフさんにとって特別なものなのでしょうか?
3回目の単独ライブというよりは、自分の中では「新しい自分として迎える第1回」みたいな気持ちでいます。
今までは、どこかでやっぱり「売れたいな」っていう下心がありながらやっていたんです。たとえば、「今の時代はこういうのがウケるかな」とか、「若い女の子はこういうので笑うのかな」とか、そんなことばかり考えながらお笑いやろうとしていたんです。多分、世代を気にしている所があるんでしょうね。ファミコンでも漫画でも、自分の思ったことをそのまま言ってみても、「きっとこれ、若い人には伝わらないんだろうな」というストップがかかっていたんです。
でも今回は、一緒にやってくれる脚本のせきしろさんのコントとかを見て、「そのまま出してもめっちゃ面白い」と思ったときに、考え過ぎるのは止めようと決めたんです。世代のこととかはあまり考えずにやろうかな、って。
―――お笑い芸人として転換期を迎えている?
40を過ぎると、昔から抱いていた「何歳までにこうなりたい」という気持ちよりも、「もう、なるようになれば良いか」たいな感じがと大きくなってくるんですよ。今の延長というか……。実際、前回の単独をやったときには、「もうしばらく単独はいいかな」なんて思っていたんです。前回は20周年ということもあって、永野さんにも勧めてもらっていて、やらせて頂いて、自分的には「一区切りついたな」と思っていたんですけれど、自分の思惑とは裏腹に、色々な方たちにイベントに呼んで頂いたり、飲みに誘って頂けたりしまして。自分としては「もういいかな」と思っていたはずが、思わぬ形で良い方向に転がっていっている気がするんです。だから、あまり深く悩んだりはせず、とにかく(芸人として)ネタを書いていこうと思ったんです。
……って言いながらも、もうすぐ子供が生まれるので、「もっと稼がないと」という焦りもあるので、最近は作家の仕事をもらったりもしています。まだ全然お金にはなっていないですけど、ゴールデンラジオのお手伝いとかをやらせて頂いています。
―――無理のない形で新しいことに挑戦されている、という印象を受けます。
まあ、そもそも、結婚も子供も割と流されるままだったので……(笑)
結果オーライでいいか、みたいな気持ちですかね。
―――それでは、今回のライブに参加されている脚本家の方々について、おひとりずつ紹介して頂けますか?
まず、「このライブをやろう」というきっかけになったせきしろさんからお話させてください。
せきしろさんとの出会いは、もともとバッファロー吾郎A先生のライブに僕が呼んで頂いたときに、せきしろさんが客席にいらして、その後の打ち上げで一緒に飲ませてもらったのが始まりなんです。僕がやったのがSFネタだったんですけど、せきしろさんもSFが好きらしくて、お互いにわっと盛り上がって、それ以来イベントに呼んで頂いたりして、その続きで「単独をやろうか」という話になったんです。
正直な話、今まで自分のネタにすごく興味を持ってくれる人っていうのがそこまでいなかったので、せきしろさんと話していて、「ああ、やっていてよかったな」という気持ちになりましたし、せきしろさんのネタも「僕に向けて書いているのか?」って思っちゃうくらいに、すごく面白いんです。家も近所なので、飲み会が終わって帰るときは電車がずっと一緒なんですよ。それで、ほろ酔いで帰っているとき、お互いに何も気を使わずに、ずけずけと言い合えるんです。
(単独ライブの)グループラインでネタ作っているときも、せきしろさんからぼんぼんネタが届いて、それが全部面白いってなると、こっちとしても「もっと頑張らないと」という気持ちになるんです。普段ならこんな量を書くことないってくらい、一週間で何本もばあって書けたりとか。切磋琢磨というか、自分の中では「合宿」みたいな感じですごく楽しかったですね。
―――おふたりの相乗効果でどのようなネタが生まれるのか、今から楽しみです。
次の方は、ヨーロッパ企画の上田誠さんです。
僕がかれこれ20年くらい芸人をやりながら、「芸人よりも劇団の方が合っているかも知れない」と思って劇団をやっていた時期が2年くらいあったんですけど、そのときにヨーロッパ企画さんを知って、もうめちゃくちゃ面白くて、純粋なファンとして毎年観に行っていたんです。しばらく経って、吉本で極悪連合っていう3人組でお笑いをやっていたんですけど、「ヨーロッパ企画さんが好き」って言い続けていていたら、たまたまヨーロッパ企画さんの方と仕事をする機会に恵まれまして、それを機に少しずつ接点が出来たんです。それで、(ヨーロッパ企画の)上田さんとせきしろさんがおふたりでイベントをやられていたりした関係で、せきしろさんにお声掛けして頂いたお陰で上田さんにもネタを書いて頂けることになったんです。お忙しい方なので申し訳ない気持ちでいっぱいなんですけれども、一緒に仕事が出来るというのが、本当に、めちゃくちゃ嬉しいんですよ。
―――それでは、最後のお一方をお願いします。
最後は、ファミ通町内会のナッツさんです。
ナッツさんは、せきしろさんの「あんまり大喜利したことない人が大喜利してみる」というイベントでご一緒させて頂いたのが始まりです。もともと、もともとファミ通の読者投稿のページを見ている方なんですけれども、初めてとは思えないくらいに大喜利が面白いんです。お笑い芸人とは違う視点というか、誰の影響を受けているのかも分からない感じの良い答えをばんばん出してらっしゃって、そのときの打ち上げでは「本当に初めてなんですか?」みたいな話をしましたね。
それから、また別のイベントでご一緒させて頂く機会がありまして、そのときに、せきしろさんが「ウルフが単独をやるから、よかったらネタを書いてくださいよ」とナッツさんに声を掛けたんです。「この間は、初めての大喜利だったけど、次は初めてのネタに挑戦してください」って。さすがにネタを書くのは酷じゃないかと思ったんですけど、「月末までに5本お願いします」とお願いしたら、本当に月末に届いて、それがせきしろさん曰く「(自分たちの中で)一番完成していた」そうなんです。初めての脚本が、脚本のプロに評価されるって、そうそうないですよ。
―――つまり、今回のライブはナッツさんの脚本家デビューでもあるんですね?
ナッツさんもおっしゃっていたんですけれども、もともと(僕たちは)似たもの同士なんですよ。多分ですけど、気が弱いとか気を使い過ぎとか、そういう部分が似ているので、ナッツさんの好きなようにネタを書いてもらってはいるものの、結果的には僕がやるのに最適な内容になっているというか。せきしろさんが「これ、ウルフの声で再生されるな」と言っていたので、違和感がなく演じられるんじゃないかと思います。年も近いし、面白いと思うことも近いんだろうな、と。だからこそ、ナッツさんのデビュー戦に立ち会えてよかったという思いがあります。
良い意味でお笑いの影響を受けていない、僕には思いつけないような世界観のネタを出してくれているので、それでお笑い芸人である僕がどんな風に演じていくのか、自分としてもかなり楽しみですね。
―――今回のライブについて、奥様(同じくお笑い芸人であるロリィタ族。)はどのような反応でしたか?
月に1回事務所ライブがあるんですけれども、(奥さんが)いつも観に来てくれるんですよ。というのも、僕がチケットノルマを達成できないから助けに来てくれるんです(笑)
ただ、今回に限ってはお産が近いから観に来れないんです。だから、日程のことだけはえらい怒っていましたね。「予定日の一週間前じゃないか!」って。あまり知識がないから「一週間前だったら大丈夫だろう」と思っていたら、「一週間前なんて全然生まれる可能性あるから、何て日に入れているのよ!」と。向こうもいつ生まれるか分からないので気が気じゃないんですけど、それでも、応援はしてくれているんです。
―――夫婦として、同じお笑い芸人として?
向こうからは、単独の2、3日前に「生まれる」ってなったら立ち会わなくてもいいからと言われているんですけど、やっぱり立ち会いたいので、早めにネタを覚えておこうと思っています。ただ、代わりに奥さんのお母さんが見に来てくれるらしいんです。
―――客席の中には奥さんのお母様がいらっしゃる?
そうですね(笑)
ただ、奥さん曰く、お母さん割とすぐに寝ちゃうらしいんですよ。過去にはコロッケさんの単独ライブでも寝ていたらしくて、「かなりの確率で寝ちゃうから」と言われはしたんですけど、でも、来てくれるだけでありがたいです。
―――奥様も全面的に応援してくれている?
なんとか単独終わりに生まれてくるよう、おなかに話しかけていましたよ。
「11月まで待ちなさいよ」って。
―――予定日通りに生まれてくることを祈ります。
―――最後に、ウルフさんの言葉でこのライブに懸ける意気込みを教えて頂けますでしょうか?
今までは「こういうモノの名前を出すとテレビでやりにくいから」とか「賞レース的にはちょっと良くないから」とか、自分でネタを作るときに、意識して排除するようにしていた要素があるんです。でも、そういう制約って、本当にお笑いに必要なことなのかなって。
今回のライブでは、「余計なことは何も考えないで、面白い事だけをやろうと思って作ったネタ」をぶつけます。言ってしまえば、生じゃなきゃやれないし、見られないネタです。あと、(ライブ会場である)渋谷のサラヴァ東京は、来年の2月で閉館してしまうんです。この空間を見られるのもあとわずかなので、是非とも足を運んで頂きたいですね。
―――ありがとうございました。
浜辺のウルフ単独公演『狼になりたい』
10月30日(火)31日(水)
開場19:00/開演19:30(約90分公演)
料金:前売¥3,000(全席自由)
+ドリンク1オーダー
出演:浜辺のウルフ
脚本:せきしろ/上田誠(ヨーロッパ企画)/ナッツ(ファミ通町内会)/浜辺のウルフ
協力:グレープカンパニー
主催:浜辺の実行委員会
会場:渋谷・サラヴァ東京
東京都渋谷区松濤1丁目29−1 クロスロードビルB1
※Bunkamura目の前、ファミリーマートの地下1Fです