お笑い芸人がバイト中に垣間見た資本主義社会の縮図とは!?

お笑い芸人がバイト中に垣間見た資本主義社会の縮図とは!?

今回お話を伺ったのは、トゥインクル・コーポレーション所属のお笑いコンビ・月見峠の平川さん。ハウスクリーニングで味わった恥ずかしい思い出とは?

「僕、4年くらい前に大阪から東京に出てきたんです。来たばかりの頃は、とにかくバイトをしたくなくて、1ヵ月くらい何もしなかったんです。でも、当たり前に金が減っていくので、『何とかパチンコとかで増やせないか』と頑張ったんですけど、そういうときに限って勝てない。それで、さすがに働かないとまずいとなったときに、家の近くにハウスクリーニング、人の家まで行って掃除するバイトの募集のチラシが貼ってあったんですよ。日払いで金をくれるというので、すぐに応募したんですけど、ハウスクリーニングって、やっぱりお金持ちの家に行くことが多いんです。大きい家、あとは街の病院とか。

 

そこの同僚に、昔音楽をやっていたっていう男がいまして、僕が挨拶のときに『お笑い芸人をやっている』と言ったら、結構嫌なことを言ってくるんですよ。『いやいや、本当に面白いんだったら大阪で売れてるでしょ』って。『わざわざ東京まで来なくていいでしょ』みたいな。『ああ、そうですね、すみません』って。目の敵みたいに、1日に3回くらいはそういう嫌味を言ってくるんですよ。しかも、毎回3、4人くらいで一緒の車に乗って現場に行くので、大体顔を合わせるんです。『嫌な奴だな』って思ったんですけど、お金がないし働かないといけないから我慢していたんです。

 

あるとき、その会社のお得意先のめちゃくちゃデカい家に行くことがあったんです。年に2回くらい、季節の変わり目くらいに掃除をお願いされるんです。入ってまだ2か月くらいだったんですけど、僕が派遣されまして、『とりあえず庭の掃除をして』と命じられたんです。結構広いんですよ、庭が。しかも、掃除って言っても室内ばかりやっていたので、庭は勝手が分からない。できることをやろうと思って、さっさっさっとホウキで掃いて、水ばちゃばちゃばちゃってかけて掃除をしてたんですよ。そうしたら、僕に嫌味を言う男がやって来て、『いやいや、こんなん全然ダメじゃん。できてないじゃん』って怒られたんです。僕、マジでイラっときて、『ちょっと待ってください』と。『そもそも正解を教えられてないから。こうしたらいいよみたいなものを見せてもらってないんで、分かりませんよ』って。

 

そうしたら、『そんなの言われなくても分かるでしょ。これじゃあ、お金がもらえる訳ないでしょ』と怒られて。しかも、『そんな風だから、お笑いでも売れないんだよ』と嫌味を言われたんです。今は関係ないじゃないですか? 何でもかんでも繋げるなって。さすがに頭に来て、『お前何言ってるの?』と言い返してしまって、そこから結構な大声で言い争いが始まったんです。お金持ちの家の庭で、作業着姿の大人の男がふたりで。

 

あとになってから、『ああ、資本主義社会の縮図やな』と思ったんですけど、ふと気が付いたら、そこの家の旦那さんと奥さんが、2階のベランダから寝間着で、僕たちを見て笑っていたんですよ。今思い出してもめちゃくちゃ恥ずかしかったです。『お金持ちに使われるというのは、こういう気持ちなんだ』と初めて実感しましたね。『なんで自分はこんな些細なこと揉めてるんだ』と思ったら、もう何も言えなくなって、素直に謝ってから庭掃除をしました」