ピンクのドレスに身を包んだ疑似姉妹コンビ 阿佐ヶ谷姉妹の魅力とは?
上品な笑いを振りまくゆるふわ疑似姉妹コンビ
芸人として売れるにはキャラが大事だと言われる。そのため、芸人たちはあの手この手を使って新しいキャラを作ろうと躍起になる。衣装や髪型を変えてみたり、言葉遣いを工夫したりギャグを考えたりすることで、何とか他人よりも目立つキャラを確立しようとする。
その点、阿佐ヶ谷姉妹の2人は、芸人として世に出た瞬間から、誰もが認める魅力的なキャラを持っている稀有なコンビだった。渡辺江里子と木村美穂の2人から成る阿佐ヶ谷姉妹は、ピンクのドレスに身を包んだ疑似姉妹コンビである。血のつながりはないものの、顔や雰囲気が似ていることもあって「姉妹」を名乗って活動をしている。
見た目や歌唱力の高さを武器に『THE W』で優勝を果たす
2人とも歌唱力に定評があり、由紀さおり・安田祥子姉妹の歌真似のネタで注目された。その後も、自分たちの見た目や歌唱力の高さなどの武器を生かして、誰が見ても笑えるネタを量産してきた。2018年には『女芸人No.1決定戦THE W』で優勝を果たし、女性芸人の頂点に立った。
阿佐ヶ谷姉妹の魅力は、駆け出しの若手芸人のようなガツガツしたところがなく、言動にそこはかとない品の良さが感じられるところだ。でも、決してお高くとまっているわけではなく、阿佐ヶ谷のアパートで庶民的な生活をしているというところに親近感を感じさせる。自分たちが「おばさん」であることに卑屈にならず、むしろそれを肯定的に捉えて、明るく生きている姿が好感を持たれている。
等身大の日常が描かれたエッセイはベストセラーに
2018年に刊行された彼女たちのエッセイ本『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(幻冬舎)はベストセラーになった。この本では、独身中年女性の2人が、六畳一間のアパートで共同生活を送っていた頃の等身大の日常がつづられていた。
当時からすでにテレビにも出始めていた売れっ子の2人だが、エッセイで描かれる私生活は実につつましい。六畳間にこたつを挟んで布団を2つ並べて寝ていた。
あるときには、美穂が自分の布団だけをシングルからセミダブルに買い替えたために、江里子は自分の布団を敷くスペースが狭くなったことに不満を感じた。そんな同居生活におけるちょっとした小競り合いなどが、淡々とした筆致でユーモラスに描かれていた。
エッセイ本が異例のドラマ化
阿佐ヶ谷姉妹の2人は、仲が良さそうだが決してベタベタしていない。お互いがビジネスパートナーとしても友人としてもお互いを必要としていて、親しみも感じているのだが、近づきすぎてうんざりしたりするところまでは行かない。距離感が実に絶妙である。
2021年にはこの本がドラマ化された。芸人の執筆した日常エッセイがドラマという形になるのも異例のことだ。
唯一無二の面白さを活かし、多方面で活躍する愛されコンビ
ネタでもトークでも唯一無二の面白さを備えていて、歌も上手いし、演技力もある。阿佐ヶ谷姉妹の芸人としての能力は全般的に高い。にもかかわらず、優等生的なお高くとまった雰囲気が一切ないのが彼女たちのすごいところだ。今後も末永く愛されるコンビとなるだろう。