鳥居みゆき 異彩を放つ唯一無二の女性芸人の魅力を深堀り

鳥居みゆき 異彩を放つ唯一無二の女性芸人の魅力を深堀り

妄想と狂気の不条理コントで一躍話題に

最近のお笑い界では女性芸人がどんどん増えているが、その中でも異彩を放っているのが鳥居みゆきである。

彼女が世の中に知られるきっかけとなったのは、2007年にインターネットテレビGyaOの番組『カンニングの恋愛中毒』に出演したことだった。ここでカンニング竹山とかみ合わないやり取りを続ける鳥居みゆきの姿がネット上で注目を集めたのだ。

「あれは素なのか? ネタなのか?」と、さまざまな憶測が飛び交い、噂が噂を呼んで、ネットの世界で大きな話題になった。インターネットが今ほど発達していない時代に、ウェブ上の口コミだけで1人の芸人にこれほど注目が集まったのは異例のことだった。

その後、『爆笑レッドカーペット』などのネタ番組に出演して、白装束で「ヒットエンドラーン」などと奇声をあげて踊り狂うネタで視聴者の度肝を抜いた。2008年にはピン芸日本一を決める『R-1グランプリ』(当時の表記は『R-1ぐらんぷり』)でも決勝に進み、彼女は一躍時の人となった。

カルチャー界のニューヒロイン誕生

一般には白い衣装でネタをやっているイメージが強いかもしれないが、当時からテレビでもさまざまな種類のネタを演じていた。彼女が演じる1人コントに共通するのは、主人公の女性の情念や妄想が主題になっていることだ。その点ではお笑いというよりも文学的・演劇的な味わいもある。

怪しく魅惑的な外見とつかみどころのない奔放な言動によって、彼女は唯一無二の存在感を持つ女性芸人としてカリスマ的な人気を博した。安部公房、夢野久作、丸尾末広、楳図かずおといった作家を愛好するアングラ嗜好・サブカル趣味を持っているところなども含めて、80年代の戸川純、90年代の椎名林檎にも匹敵するような、カルチャー界のニューヒロインの風格があった。

鳥居みゆき

俳優業でも引っ張りだこの人気

彼女は自らの妄想的な世界観を具現化した「狂宴封鎖的世界」と名付けた単独公演を定期的に行う一方、強烈な存在感と高い演技力を生かして役者としても数多くの映画・ドラマ・舞台に出演した。自らの単独公演やネタや作品では自分だけの世界をどこまでも追求していくが、俳優業では与えられた役柄をきっちり演じてみせる。自分が軸でも他人が軸でも高いパフォーマンスが発揮できるところが彼女の強みだ。

現在は、発達が気になる子供たちを楽しくサポートする教育番組『でこぼこポン!』(Eテレ)にレギュラー出演している。唯一無二の存在感を保つ鳥居みゆきという刃の切れ味は今も変わっていない。

お笑いTVで、鳥居みゆきの関連動画を観る。