俺のリュックは開いていない

俺のリュックは開いていない

天才って「変わり者が多い」っていうじゃないですか。私が知っている人の中で天才として真っ先に思い浮かぶのが、この『オモプラッタ』をプロデュースしているIT起業家のMさんなんですよね。彼こそは天才であり、そして、めちゃくちゃ変わり者です。

 

先日、打ち合わせに向かう途中の路上でMさんに会ったとき、彼の背負っているリュックサックのファスナーが開いているのを見つけました。ファスナーを閉め忘れたのだろうと思って、私は親切のつもりで声をかけました。

Mさん、リュック開いてますよ

すると、彼はこう答えたのです。

いや、いいんですよ。開いてないですから

ん?

私は一瞬、意味が分かりませんでした。彼の背負っているリュックの口は明らかにガバガバに開いているのです。大人が腕を入れられるぐらいの幅で大きく開いているのです。でも、Mさんはその状態を「開いていない」と言い切っている。その場に居合わせたMさんの部下の青年があきれたような表情で私に言いました。

すいません、ラリーさん。Mさんはずっとこの調子なんですよ

え!?

………話を聞いてみると、Mさんは基本的にファスナーを開けた状態のままで常にリュックを使用しているそうです。そして、何度か他人に注意されたことはあっても、そのファスナーを閉めることはなかったというのです。リュックが壊れているとか、何らかのこだわりがあって開けているとか、具体的な理由があるならばまだ理解できなくもありません。しかし、Mさんはそもそも、ファスナーが開いている状態のことを「開いていない」と表現しているのです。日本語が通じないのでどうすることもできません。

 

その後、打ち合わせの席で、『オモプラッタ』にかかわっているデザイナーさんなど他のスタッフ数人も交えて、再びその話題が出ました。みんなが口々に「ファスナーは開いている」と主張するのですが、Mさんはそれでも頑なにファスナーが開いていることを認めません。だんだん怖くなってきました。

 

スティーブ・ジョブズマイケル・ザッカーバーグ堀江貴文など、IT起業家には変わり者が多いというのは事実ですが、Mさんもその例に漏れません。ただ、Mさんの場合、気難しいとか発想がぶっ飛んでるとかではなく、ただ意味不明なのです。そこが恐ろしい。そして、そこが天才的だとも思います。

 

先日も、仕事仲間のデザイナーさんが40度の熱を出して三日三晩寝込んでいたという話を聞いて、Mさんは腹を抱えて笑い転げていました。いや、そこ、笑うところじゃないです。他人の不幸は笑ってはいけません。笑いのツボも独特すぎるMさんが仕掛け人を務める『オモプラッタ』に未来はあるのか?

 

今後も温かく見守っていただければと思います。