『R-1』で勝つために必要な「突破力」

『R-1』で勝つために必要な「突破力」

前回、ピン芸の日本一を決める『R-1ぐらんぷり2017』のことを書いたんですが、今回もそのお話です。2月28日に決勝が行われてからすでに2週間近く経っているわけですが、私を含むお笑い愛好家の間ではいまだに興奮さめやらないところがあります。アキラ100%さんのマネをしようとして、全裸で股間の前でお盆をひっくり返す動きに挑戦し、アソコを強打して苦しんでいる男子小学生も日本中にたくさんいることでしょう。

 

先日、知り合いの1人と『R-1』について話していたところ、その人がこんなことを言っていました。

 

女性芸人で毒舌みたいなネタをやる人が多かったと思うんですけど、最近そういう人が増えているんですか?

 

私は思わず池上彰ばりに「いい質問ですね」と言ってしまいそうになりました。確かに、今回の『R-1』では女性芸人の活躍が目立っていた上に、その中でもちょっと攻めたようなネタをやっている人が目立ちました。特に、ゆりやんレトリィバァさんと紺野ぶるまさんのネタの中には、明らかに特定の人に対する悪意と偏見をむき出しにしたようなフレーズがありました。個人的にはそういう種類の笑いは大好きなんですけれども、そのドギツさに驚いた人もいるかもしれません。蛇足ですが付け加えるならば、お二人とも対象となる人々に対して本当に悪意や嫌悪感を持っているわけではなく、あくまでも笑いのための手段としてそういうスパイスをあえて加えているのだと思います。

 

決勝でこういう種類のネタをやる人が多かったように見えた理由は、こういう種類のネタが予選を勝ち抜くのに有利だから、ということだと思います。『R-1』の参加者は例年3000人を超えています。予選を勝ち抜くためには、そこそこ面白いだけでは通用しません。たくさんのピン芸を一度に見たときに、深く印象に残って忘れられなくなるような、破壊力のあるネタやキャラが求められるのです。「毒舌」もそのための有効な武器の1つなのです。

 

今年、優勝を果たしたアキラさんのハダカ芸も、間違いなくそのような「突破力」を備えていました。準決勝の会場でも、アキラさんのネタは段違いに観客の心に刺さり、会場はBIGBANGのライブぐらい盛り上がっていました。『R-1』に勝つためには、圧倒的な面白さに加えて、突き抜けるための「突破力」が必要なのです。