かもめんたる 挫折を経験してきた学生芸人出身が演劇への方向転換した理由
「学生芸人あがり」の草分け的存在
現在、大学のお笑いサークルに所属して活動する「学生芸人」がちょっとしたブームになっている。ラランドをはじめとして、学生芸人からプロの芸人になる人も続々と出てきていて、いまや学生芸人出身者はお笑い界では珍しい存在ではなくなってきた。
そんな華々しい活躍をする学生芸人の草分けのような存在だったのが「WAGE」である。これは早稲田大学にあったお笑いサークルの名称であり、そこから派生したお笑いユニットの名前でもある。
このサークル出身の5人のメンバーがユニットを結成して、「WAGE」という名前で大手芸能事務所に所属して、プロの芸人として活動を始めた。しかし、今一つパッとしない時期が続き、WAGEは解散してしまった。
小島よしおが一足先にブレーク
その直後、メンバーの1人だった小島よしおがピン芸人として突然の大ブレークを果たした。それを横目で眺めながら、メンバーのうちの2人もお笑いコンビとして活動を再開した。それが岩崎う大と槙尾ユウスケの2人から成る「劇団イワサキマキオ」である。彼らはのちにコンビ名を「かもめんたる」と改めた。
ネタ作りを担当する岩崎が手がける、人間の心の闇に迫るようなコントは業界内でじわじわと話題になっていった。そして、2012年には『キングオブコント』で決勝に進み、2013年には同大会で悲願の優勝を果たした。
この手のビッグなお笑いコンテストで優勝すれば、そこからはテレビに出まくってタレントとして活躍する、というのが王道のルートなのだが、かもめんたるはそこには乗れなかった。
「劇団かもめんたる」として演劇の道へ
テレビタレントとしての適性がないことに気付いた2人は、そこから思い切った方向転換を図った。彼らを中心にして役者を集めて、「劇団かもめんたる」を結成して、演劇の活動を本格的に始めたのだ。
岩崎の作家としての才能が花開き、劇団かもめんたるはお笑い業界でも演劇業界でも高い評価を受けて、2020年から2年連続で岸田國士戯曲賞にもノミネートされた。
「学生芸人あがりのユニット」としても「タレ日タレント」としても挫折を経験してきたかもめんたるは、今ようやくのびのびと活動できる場所を見つけて、それが世の中にも認められるようになってきた。かもめんたるというお笑いコンビが本当の意味で面白くなるのはこれからだ。