いとうあさこ 唯一無二のポジションで活躍。アラフィフ世代の明るい自虐

いとうあさこ 唯一無二のポジションで活躍。アラフィフ世代の明るい自虐

明るい自虐が売りのお笑い女王

年齢とは女性にとって最大のタブーである。男性と違って、女性は自分の年齢を大っぴらに公言したり積極的に口にしたりすることはほとんどない。笑いのために身を削ることの多い女性芸人ですら事情は同じだ。

恐らく、見る側に年齢を意識されても、それが笑いにつながることが少ないからではないか。一般の社会と同じように、お笑い業界でも女性の年齢というのはデリケートな話題に属しているようだ。

自虐ネタに痛々しさがない

十数年前、自らの年齢を堂々と叫ぶネタでいとうあさこがブレークしたのは、その意味で衝撃的なことだった。彼女は「浅倉南、39歳!」などと、ネタの冒頭で自分の実年齢を声高に名乗り上げ、レオタード姿で新体操の演技に乗せて、加齢に伴う心身の衰えを漫談形式で明るく披露した。2010年の『R-1ぐらんぷり』でも決勝進出を果たし、ここから人気に火がついた。

女性芸人の演じる自虐ネタは暗くて生々しいものになりがちなのだが、いとうあさこの芸にはカラッとした明るさがあり、嫌な感じがしない。39歳で独身。婚期を逃し、体力も衰え、将来への不安を抱える彼女の自虐ネタには、なぜか痛々しさがほとんど感じられないのだ。

1200万円を男に貢いだ

彼女のそれまでの半生も、経歴だけを見れば決して順風満帆とは言いがたい。裕福な家庭に生まれ、お嬢様学校の名門として知られる雙葉高校を卒業後、女優を志して家を飛び出す。その後、夢を抱えながらも男性と同棲生活を始める。

付き合った男たちは皆、しっかり者の彼女に一方的に甘えて自堕落な生活を送るようになる。20代の間、3人の男に計1200万円を貢いでいた。白馬の王子様に憧れていた彼女は、いつのまにか自分が馬車馬のように働いて男に貢ぐ日々を歩んでいたのだ。

その一方で、女優からお笑いへと将来の方向性を転換するも、芸人としては鳴かず飛ばず。2003年には組んでいたコンビも解散。その後、ピン芸人としても不遇の時期が長く続いた。

芸人特有のコンプレックスと無縁

ただ、バラエティ番組などで、そんな怒濤の半生を振り返って話をする彼女は、生き生きとしていて少しも悲惨そうには見えない。貢ぎ倒した過去についても、後悔したり相手を責めたりするようなそぶりはなく、非常に前向きに捉えているのがうかがえる。

いとうは初めからお笑いの道を志していたわけではないので、良い意味でそこに縛られていない部分がある。彼女は常に芸能界の高みを目指して憧れを抱き、たまたまお笑いに流れ着いただけなので、芸人特有のコンプレックスや問題意識とは無縁だったのだ。

すでにアラフォーを超えてアラフィフ世代となった彼女は、相変わらず明るく爽やかで、体を張ったヨゴレ仕事をしていてもどこか品の良さを感じさせる。そんな資質を備えた同世代の女性タレントがほかにいないからこそ、彼女の存在感が際立っている。いとうが築いた現在のポジションは唯一無二のものであり、今後も長く活躍が期待できるだろう。

お笑いTVで、いとうあさこの関連動画を観る。