正統派の女性ピン芸人 吉住が評価されたコントの根底にあるものとは

正統派の女性ピン芸人 吉住が評価されたコントの根底にあるものとは

ストーリー性のある1人コントを専門にする正統派ピン芸人

吉住は、いま最も勢いのある正統派の女性ピン芸人である。彼女を「正統派」と呼んだのは、ストーリー性のある1人コントを主な持ちネタにしているからだ。

お笑いの世界でも、1人で演じる「ピン芸」ほど多種多様なものはない。1人コント、漫談、歌ネタ、ものまね、フリップ芸など、芸人の数だけジャンルがあると言われるほど芸の種類が幅広い。中には、音と映像を使った変則的なフリップ芸を見せるZAZYのように、新しいジャンルを開拓している人も存在するほどだ。

そんな中で、吉住は何らかの役柄を演じる1人コントを専門にしている。そのネタの面白さは高く評価されていて、2020年の『女芸人No.1決定戦 THE W』では優勝を果たし、『R-1グランプリ』でも2021・2022年に2年連続で決勝に進んでいる。

吉住

『THE W』で優勝後、冠番組もスタート

吉住はもともとコンビとして活動していたが、解散してからピン芸人に転身した。そこからすぐにフジテレビの若手芸人発掘番組『新しい波24』にも出演した。そこでは霜降り明星、四千頭身、ハナコなど、のちに「第七世代」と呼ばれて爆発的なブームを巻き起こすメンバーもいたが、吉住はその波に乗ることはできなかった。

『THE W』で優勝してからテレビの仕事も増えてきて、2022年には蛙亭のイワクラと2人でMCを務める冠番組『イワクラと吉住の番組』も始まった。

女性芸人の中には「恋愛」をテーマにしたネタを演じる人が多いのだが、吉住はそこに縛られることなく、多彩なネタを持っている。基本的には、世の中に対する恨みつらみや皮肉っぽい目線が感じられるものが多く、そこが売りになっている。特に、2022年の『R-1』決勝で見せた「ネットで芸能人の悪口を書く女性」のコントは、吉住らしい毒気がめの傑作だった。

吉住

「ありがたい、ありがたい」と自分を鼓舞して表舞台に立ち上がる

吉住はいろいろなことを気にして、考えすぎてしまうことが多く、『アメトーーク!』で彼女がプレゼンした「生きづらい芸人」という企画が行われたこともあった。吉住はテレビに出るのも苦手で、収録の合間には楽屋の天井を見ながら「ありがたい、ありがたい」と独り言を言って自分を励ましているのだという。

インターネットが普及して、SNSを通じた監視社会化が進展する中で、人々が他人の目を意識しすぎて生きづらさを感じるのは一般的になってきた。そんな時代だからこそ、考えすぎることによる生きづらさを表現した吉住のコントが評価されているのだろう。

お笑いTVで、吉住の関連動画を観る。