漫才とコントの違いとは?全体の構成や考え方の違いまでを徹底解説

漫才とコントの違いとは?全体の構成や考え方の違いまでを徹底解説

漫才とは何か?

漫才は、お笑いの種目のひとつで、基本的には2人1組のコンビによって行われる「掛け合い」のことを指します。

「ボケ」と「ツッコミ」に分かれ、お互いの会話の流れによって観客の笑いを誘います。
漫才の語源は、新年に太夫(たゆう)と才蔵(さいぞう)と呼ばれる2人1組が家々を訪ねて祝いの歌舞を演じる「万蔵(まんざい)」に由来していると言われています。

昭和初期に、現在も広く知られている漫才のスタイルである「しゃべくり漫才」が登場して以降、テレビなどで全国的に広まり、今日の地位を獲得するに至っています。

コントとは何か?

コントは、フランス語で「寸劇」を意味する言葉で、特に日本では笑いを目的とした寸劇のことを指します。舞台上にいる2人が、あくまでも本人として面白い掛け合いをする漫才に対して、コントは、ストーリーや設定に基づいて架空の人物を演じるのが特徴です。

コントの歴史は、戦後のストリップ劇場でショーの幕間に行われていた芝居が発祥であると言われています。

前述の通り、コントでは演者が架空の人物になりきるので、テレビ番組で人気を博すようなキャラクターが生まれやすく、1980年代以降は各局でコントを中心に据えたバラエティ番組が数多く制作されました。

漫才とコントの違いとは?

「同じお笑いである」「テレビでよく目にする」など、共通点の多い漫才とコントですが、漫才は『M-1グランプリ』、コントであれば『キングオブコント』と、それぞれ別の大会が存在しています。

漫才師として漫才一本でやっていて、コントはやらないというお笑い芸人がいる一方で、両方にエントリーしているお笑い芸人もいますが、披露するネタはそれぞれの大会で全く異なっています。両者の違いは一体何なのでしょうか。ここでは、分かっているようで実は説明できない「漫才とコントの違い」について考えていきます。

全体の構成が違う

漫才は基本的に、お笑い芸人による挨拶と自己紹介とともにネタが始まっていきます。
お互いの近況や最近気になっていることなどを「掴み」として話してから、本題に入っていくような形式です。たとえば、「最近服屋さんに行ったら、店員さんから冷たい接客をされて悲しかった」という掴みから、「俺が服屋の店員さんをやるから、お前はお客さんとして入ってきて」というように展開していきます。対してコントは、演劇のようにストーリーを演じながら笑いを誘っていく様式です。

挨拶や自己紹介は省かれることが多く、同じ服屋さんのネタでも、漫才のように導入を入れることは少なく、いきなり「試着できるので、よかったら声をお掛けくださいね」という台詞から始まっていきます。

自分たちの世界観に引き込むという点では似ていますが、あくまでも自分としてその話題を取り扱うのか、それとも、当事者になりきってその話題に没入するのかが、漫才とコントの構成の大きな違いと言えるでしょう。

衣装が違う

寸劇であるコントは、演劇と同じくストーリーに合わせた衣装で登場することが多いです。
たとえばコンビニが舞台のコントであれば、どちらか片方はコンビニの制服を着ていますし、銀行強盗を題材にしたコントなら、目出し帽を被ることもあります。さらに小道具や舞台のセットなども駆使することで、徹底的に世界観を作り上げ、そこで展開されるストーリーに観客の意識を集中させるのです。

一方、漫才の場合は基本的にはスーツで登場することが多いです。
コントとは違い、最も注目して欲しい部分が自分たちの「しゃべり」であるため、見た目でのインパクトは重要視せず、清潔感のある服装を意識しています。

時間が違う

漫才は、基本的に5分程度の長さです。
『M-1グランプリ』予選の1回戦は持ち時間が2分と、かなり短く設定されています。ふたりの掛け合いを楽しむ漫才においては、時間の長さは重要な要素ではなく、むしろ、集中力が減ってきていると言われている現代人の心をどれだけ短時間で鷲掴みにできるかが肝心なのです。

一方、コントは5分〜10分が一般的な長さと言われています。これは、寸劇という特性上、観客に世界観を伝えるのにある程度の時間が必要なため、ネタを作り込めば作り込むほど、全体の時間が長くなってしまうのです。もちろん、20分近くある漫才もありますし、1分も掛からずに終わってしまうようなショートコントも存在します。

最新の漫才とコントのトレンド

漫才とコントの違いについて「構成が違う」と説明しましたが、現代ではこの垣根を壊すような「コント漫才」と呼ばれる漫才が登場しています。
実は、先ほど例に挙げた「俺が服屋の店員さんをやるから、お前はお客さんとして入ってきて」という漫才も、いわゆるコント漫才に分類されるのです。衣装や始まり方は漫才ですが、その漫才の中で「誰かを演じる」という部分はコントの形式です。

ショートコントを織り交ぜた漫才によって緩急を付けて笑いを取る「コント漫才」は、今や正統派である「しゃべくり漫才」と並んで人気を博しています。2020年の『M-1グランプリ』で王者に輝いたマヂカルラブリーの漫才も、コントの側面を併せ持ったコント漫才と言えるでしょう。

また、現代のお笑いのトレンドとして「人を傷付けない笑い」が挙げられます。特定の何かを小馬鹿にして共感を得るような漫才やコントを疑問視し、他人を傷付けずに面白いことをするという方向性にチャレンジする若手芸人が増えてきています。2019年の『M-1グランプリ』で3位になったぺこぱなどが代表例です。

まとめ

違いが分かったうえで漫才やコントを見ると、ただ単に面白いだけではなく、お笑い芸人がどのようなことを考えてネタを作っているのかまでが少しずつ分かるようになってきます。そうなれば、より深くそのネタを楽しむことができるでしょう。

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