幽霊が奪っていった僕の◯◯◯

幽霊が奪っていった僕の◯◯◯

鎧荘

10年以上前になるんですけど、新宿の北新宿で、人通りも少なくて夜になったら歩くのも怖いような道があって、その奥に鎧荘っていうアパートがあったんです。ちょっと名前からして怪しげじゃないですか?奥に入っていくと湿気がすごいんですよ。部屋も「い号」「ろ号」「ち号」、あのいろはにほへとの、「い号」「ろ号」って表記なんですよ。

―――数字じゃないんですね?

数字じゃないです。それで、僕が住んでいた部屋が「ち号」だったんですよ。たちつてとの「ち号」に住んでたんです。1階に住んでたんですけど、2階に登る階段があって、その階段の途中から僕の部屋が覗けるような仕組みになってる、本当にちょっと危ない感じの家なんですけど。

そこに住んでる時に、僕がすんごい疲れて帰って、家に帰って、しばらく寝てなかったもんで、もうバタンキューで布団に倒れ込んだんです。それで、さっさと寝ようと目を閉じたら、「パーン」って、外の遠くから「パーン」って何かが弾ける音が聞こえたんです。「なんだろうな?」って思ったけど、もう寝たいから、とにかく目をつむったんですけど、耳だけは冴えてしまって。そうしたらまた、10秒くらいしたら「パーン」って鳴って、それが10秒おきにするんです。しかも、家の方にどんどん近づいてくるんです。「これはラップ現象じゃないか」と思って。「疲れてるから、幻聴がしているのかな」とか思ってると、その音が家の中に入ってきたんですよ。

部屋の中に………

―――部屋の中から聞こえる?

音だけが「パーン、パーン!」って家の中に入った瞬間が分かったんですよ。「うわっ、これは流石に幻聴じゃない」って、むちゃくちゃ鳥肌が立って。怖いから目も開けられなくなって、音が過ぎ去るのをずっと待ってたんです。ちょうど僕の上に来る10秒前にまた「パーン」って鳴ってやっぱり近づいてきていて、「あと10秒後には僕の上にくる!」「ヤバい、どうしよう!」って、ずっと目を開けずにいたんですけど、その10秒後、パーンとは鳴らずに、その代わり、チン毛がものすごく痒くなったんです。ものすごく。

―――音はしなかったけど、チン毛は痒くなった?

その10秒後、近くの冷蔵庫が「ウィーン」って鳴り出して、それで終わったんですけど。「あれはなんだったんだろうな」と今でも思いますね。そのせいで、1時間くらい目を開けられなくて。眠いのに意識は冴えちゃったし。

―――意識はあったんですか?

意識はあります。
目を開けて、「なんだったんだあれは?」と思って、とりあえずパンツだけ覗いてみたら、チン毛が10本ほどパラリと落ちたんです………

―――痒みは一瞬だったんですね。

痒みは一瞬です。
でも、めちゃくちゃ痒くなったんです。なんだったのか未だにわからないです。これは霊現象だと僕は思ってます。

―――そうですね。

本当に怖い霊体験って、それはなんだったのか分からない。オチがないやつの方が本当なんです。
だからこれ、本当の話です。霊が僕のチン毛にいたずらをした。いやあ、怖かったですね。

―――何とも言えない怖い話ですね。