髭男爵 「一発屋芸人」の烙印を押されても手堅く仕事を続けている開き直りの戦略

髭男爵 「一発屋芸人」の烙印を押されても手堅く仕事を続けている開き直りの戦略

一発屋からコラムニストへ

山田ルイ53世とひぐち君の2人から成る髭男爵は、2007~2008年頃に「ルネッサーンス」というギャグで一世を風靡した。『爆笑レッドカーペット』などのネタ番組を中心に、数多くのバラエティ番組に出演した。

そんな彼らも、かつては典型的な器用貧乏タイプの芸人だった。コンビ結成当初は、しゃべりもネタもそこそこ達者ではあるが、どこかぱっとしない印象がぬぐえなかった。

上田晋也の助言で芸風を一新

そんな彼らに転機が訪れた。あるとき、テレビ出演の機会を得た彼らは、共演したくりぃむしちゅーの上田晋也から「お前ら、髭男爵っていう名前なのに髭でも男爵でもないじゃないか」と言われた。そこで山田ルイ53世は芸風を一新することを決めた。髭を整えて、貴族の衣装を身にまとった。そして、貴族のキャラクターを前面に押し出した漫才を一から作り上げることにしたのである。

初めは山田だけが貴族の衣装を着ていたが、のちに相方のひぐち君も召使いの格好をするようになった。さらに、ここにもう一つ画期的なアイデアが加わる。それこそが、いまや髭男爵の代名詞となった、ワイングラスを合わせて「なんでやねーん」とツッコむ、あの「乾杯ツッコミ」である。

ワイングラスという小道具が貴族のキャラを際立たせるとともに、乾杯ツッコミで漫才のテンポが良くなった。こうして髭男爵は、漫才師として執念の転身を果たしたのである。

「一発屋芸人」として開き直る

キャラクター要素の強いネタでブレークしてからしばらく経って、勢いが衰えた彼らは「一発屋芸人」の烙印を押された。しかし、ここからがしぶとかった。彼らは一発屋になってしまったことを堂々と受け入れて、開き直る戦略に出た。2015年に行われた「一発屋オールスターズ選抜総選挙」では見事に1位に輝いた。

さらに、山田は文筆業でも才能を発揮した。彼が仲間の一発屋芸人たちを取材してまとめたルポルタージュ『一発屋芸人列伝』はベストセラーになり、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した。数多くのメディアで文章を執筆し、著書も多数出版している。

ひぐち君はワイン好きが高じて日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートになり、ワイン業界で仕事の幅を広げている。髭男爵は一発屋と呼ぶのは失礼にあたるぐらい、今でも手堅く仕事を続けている。

お笑いTVで、髭男爵の動画を観る。