キンタロー。前田敦子のものまねで一躍ブレークしたその魅力を徹底調査!
元ダンス講師のものまねダンシング・クイーン
アイドルの世界などと違って、お笑いの世界ではデビュー直後に売れっ子になる人はほとんどいない。芸人には確固たる「芸」が求められており、それは一朝一夕で身につくようなものではないからだ。
しかし、ごくまれにそのセオリーを覆す逸材が現れることがある。芸歴1年目で鮮烈なデビューを飾り、一気に有名になったキンタロー。は、そんな歴史に名を残す逸材の1人だった。
前田敦子のものまねで一躍ブレーク
彼女が世に出るきっかけになったのは、2012年12月に放送された『とんねるずのみなさんのおかげでした』と『有吉反省会』である。そこでAKB48の前田敦子のものまねネタを披露したところ、大反響を巻き起こして、一気に世間の注目を集めた。
当初は、AKB48の熱狂的なファンの一部から感情的な反発も見られたものの、あっという間にそれも沈静化していき、キンタロー。はバラエティを中心にあらゆる番組に引っ張りだこの人気者となった。
ありそうでなかった革新的なアイデア
彼女が注目された最大の理由は、ものまねの題材選びの斬新さである。当時、圧倒的な人気を誇っていたAKB48のものまねをするというのは、ありそうでなかった革新的なアイデアだった。
また、彼女はAKB48のものまねをするのにうってつけの資質を備えていた。それは、特徴的な見た目と卓越したダンスの腕前だ。キンタロー。は頭部が大きく背が低いコミカルな体形である。そんな彼女がアイドルを演じると、それだけで強烈な印象が残る。しかも、社交ダンスの講師を務めていたこともあり、ダンスの実力は折り紙付きだった。本物をしのぐほど切れのある動きでアイドルの振り付けを全力で踊るからこそ、外見とのギャップで笑いが増幅することになる。
批評としてのものまねの魅力
さらに言えば、彼女の人気の背景には、世間の人がAKB48に対して漠然と抱いている「違和感」のようなものがあった。AKB48は当時たしかにすさまじく人気があったのだが、支持している人は必ずしも多数派ではなかった。
世の中の大半の人は、AKB48にそこまで興味がない。そんな一般の人たちは、AKB48のメンバーがかもし出す独特の雰囲気や、彼女たちのファンの異常なまでの情熱といったものに、何かしらの違和感を抱いていることが多かった。
ただ、だからといって、表向きにAKB48を直接批判するのは心理的にも抵抗がある。そんなときに現れたのがキンタロー。だった。キンタロー。は、AKB48メンバーの一挙手一投足をデフォルメしたものまねを演じていた。そんな彼女のネタを見て、人々は笑いながら、AKB48への違和感を代弁してもらったように感じて、すっきりした気分になっていたのではないか。ものまねという芸を楽しむ人の心理には、多かれ少なかれこういう部分があるような気がする。いわば、ものまねは一種の「批評」であるからこそ面白いのだ。
「ものまね」と「ダンス」を武器に
その後も彼女はものまねのレパートリーを増やし続けているし、バラエティ番組の企画で社交ダンスに挑戦したことでも話題になった。テレビで前田敦子との共演も果たしている。「ものまね」と「ダンス」という2つの分野で絶対的な才能を誇る彼女は、今後も活躍を続けていくだろう。