漫才とは? 漫才の作り方・話し方から歴史まで
漫才とは何か?
漫才は、お笑いの種目のひとつで、基本的には2人1組のコンビによって行われる「掛け合い」のことを指します。
「ボケ」と「ツッコミ」に分かれ、お互いの会話の流れによって観客の笑いを誘います。
漫才の語源は、新年に太夫(たゆう)と才蔵(さいぞう)と呼ばれる2人1組が家々を訪ねて祝いの歌舞を演じる「万蔵(まんざい)」に由来していると言われています。
昭和初期に、現在も広く知られている漫才のスタイルである「しゃべくり漫才」が登場して以降、テレビなどで全国的に広まり、今日の地位を獲得するに至っています。
漫才の考え方
漫才は2人の会話・掛け合いによって観客を楽しませる演芸ですが、ただ単に、普段の会話の中に面白い話を混ぜるのではなく、一定の様式や、漫才を構築するための「考え方」が存在しています。
Step1・設定を考える
漫才における「会話の流れ」は、一種の「世界観」と言い換えることができます。
衣装や小道具に頼らず、会話だけで笑いに引き込まなくてはならない漫才においては、「いかに自分たちの世界観を提示するか」が重要になってきます。そこで求められるのが、設定を考えることです。
お客さんの関心や共感を得るためには、どのような話題を取り扱えばいいのか、会話の設定を決めなくてはなりません。
「子供の頃、理不尽に怒る先生っていなかった?」というような誰もが理解できるような話題や、「今年のパ・リーグは◯◯が優勝したね」というように、そのとき話題になっている時事ネタについて話したりなど、さまざまなテーマを自分たちなりの切り口で取り上げるのが、漫才の第一歩です。
Step2・設定の中で使用できそうなボケを考える
漫才における面白さのひとつに、「ボケ」と「ツッコミ」の掛け合いが挙げられます。たとえば、「理不尽に怒る先生に毅然と言い返したい」というネタがあるとします。
ツッコミ役が「俺は怒られる生徒をやるから、お前は先生をやって」とボケ役に頼みます。ボケ役は先生になりきり、生徒であるツッコミ役を怒ることになりますが、漫才においては本当の先生のように振る舞うのではなく、ツッコミの面白い返しを誘発できるようなボケを言わなくてはなりません。
廊下を走っている生徒を注意するというシチュエーションでも「廊下を走るな!」ではなく、「まだ第1コーナーなのに飛ばすな!」とボケることで、「生徒は競走馬ちゃうわ!」というツッコミが生まれます。
漫才における掛け合いとは、ボケとツッコミの応酬に他なりません。いかに優れたボケを多く用意できるかが、その漫才全体の面白さを決定すると言っても過言ではありません。
Step3・全体のストーリーを考える
面白いボケとそれにフィットするようなツッコミをたくさん用意できたとしても、全体のストーリーが整備されていなくては漫才にはなりません。どれだけ一品一品が美味しくとも、全体の調和が取れていなければコース料理として成立しないのと同じです。
料理における最大の山場が「メインディッシュ」なら、漫才における最大の山場は「オチ」です。
ボケとツッコミをたくさん織り交ぜながら、一番最後にそのストーリーを締め括れるようなオチを用意できれば、漫才の完成度はぐっと上がります。
さきほど例に挙げた「理不尽に怒る先生に毅然と言い返したい」というネタの場合、廊下を走る生徒を競走馬に例えるようなボケをいくつか用意したうえで、最後に「生徒が乗ってきた高級車に怒る」としましょう。そこでツッコミが「いや、理不尽じゃなくてリムジンに怒ってたんかい!」と締めることで、ひとつのオチが完成します。
これはあまり面白い例ではありませんが、要は、これまでのストーリーとそこに挿入されるボケとツッコミの応酬を踏まえたうえで、気の利いたまとめの一言で締め括れると、観客はすっきりとした気持ちでその漫才を見終えることができるのです。
Step4・導入を考える
見落としてしまいがちですが、漫才において「オチ」と同じくらいに大切なのが「導入」です。
プロのお笑い芸人は導入が自然かつ上手なので、普段テレビを見ているときは意識しづらいかも知れませんが、自分の話に引き込むための「掴み」を考えるのはとても難しいことなのです。
「これからどんな面白い話が聞けるんだろう」と身構えている観客をリラックスさせつつ、その後の笑いに繋げられるような導入を考えられれば、自分なりの漫才のスタイルを確立しやすくなります。
「サンドウィッチマン」のようにさっと本題に入るコンビもいれば、「ミルクボーイ」のように定番のやり取りを必ず挟むコンビもいます。
漫才の歴史
漫才の元となったのは、平安時代、宮中や大名の邸宅などで新年を祝う芸能である「千秋万歳」であると言われています。
徐々に一般家庭にも広がりを見せていき、室町時代の末期には「万歳楽」、その後は「万歳」と呼ばれるようになりました。大和万歳や三河万歳など、現在でも各地にその文化が残っています。「万歳」は、扇を持って舞いながら祝いの言葉を口にする「太夫」と、太鼓を持って笑いを誘う「才蔵」の2人1組が基本になっていて、これが漫才コンビのベースになっています。「太夫」がツッコミ、「才蔵」がボケに当たります。一種の行事でもあった「万歳」は、面白さを追求する芸能へと変化していき、現代の「漫才」になったのです。
漫才が面白い芸人
「お笑い」と聞いて多くの人がまっさきに思い浮かべるのは、コントではなく漫才なのではないでしょうか。
日本一の漫才師を決める大会である『M-1グランプリ』の影響もあり、面白い漫才を見られる機会は昔よりも増えていると言えます。
ここでは、最近のトレンドを踏まえたうえで、漫才が面白い芸人・コンビを紹介していきます。
錦鯉
2020年の『M-1グランプリ』決勝に最年長として出場したことで一躍話題となったコンビです。スタイルとしては王道のしゃべくり漫才ですが、長谷川の濃過ぎるキャラクターと、時には翻弄され、時には冷徹な一言を返す渡辺のスマートなツッコミは、一度笑い出したら止まらない独特の空気感を作り上げています。CMなどのタイアップも急増し、最年長ながらも今後の活躍が期待されるコンビです。
オズワルド
2019年から2021年まで、3年連続で『M-1グランプリ』ファイナリストになった実力派の漫才コンビです。やはり王道のしゃべくり漫才ですが、「オズワルド」の2人は、自身が影響を受けているという「おぎやはぎ」のように、少しダウナーなテンションを武器としています。何気ない口調から繰り出されるボケとツッコミの応酬には、このままずっと聞いていたいと思わせる魅力があります。
マヂカルラブリー
2020年の『M-1グランプリ』で優勝を飾り、『キングオブコント』でも好成績を収める、漫才・コント両方に対応するオールラウンダーなコンビです。漫才の中でコントのような設定を展開する「コント漫才」を得意としており、2020年の『M-1グランプリ』は、新しい形の漫才が認められた歴史的な大会となりました。野田クリスタルの誰にも真似できない鮮烈なボケは、同じお笑い芸人からも一目置かれているそうです。
まとめ
漫才とは、緻密な計算によって作り上げられている一種の作品と言えます。ただ見ているだけでも十分に面白いですが、「このネタはどういうふうにできたんだろう?」と考えながら見直してみると、違う笑いを発見できるかも知れません。
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