ペンギンズ 長いキャリアを持つ苦労人から「アニキ漫才」が生まれた理由

ペンギンズ 長いキャリアを持つ苦労人から「アニキ漫才」が生まれた理由

狭間の時代に咲いた任侠漫才の花

ここ数年、お笑い界全体が盛り上がりを見せていて、毎年のように新しい売れっ子芸人が続々と輩出されている。しかし、ほんの少し前、具体的に言うと2012~2017年頃は、お笑いがあまり盛り上がっていない「狭間の時代」だった。

2008~2010年頃には『爆笑レッドカーペット』という番組を中心にして「ショートネタブーム」が起こり、『M-1グランプリ』『エンタの神様』『あらびき団』なども人気があった。また、2018年からは霜降り明星ハナコなどの新しい世代の若い芸人が台頭してきて「第七世代ブーム」が起こった。

ブルゾンちえみと同じ番組で注目

これらのブームの狭間の時期には、お笑い要素の強いバラエティ番組も少なく、ブレークする芸人の数も少なかった。そんな中で唯一、社会現象になるほど爆発的な人気を獲得したのが女性ピン芸人のブルゾンちえみだった。

ブルゾンちえみは2017年1月1日放送の『ぐるナイ おもしろ荘』で優勝したことがきっかけで大ブレークを果たした。彼女のその後の活躍は多くの人の記憶に刻まれているだろう。

実は、そこで準優勝した芸人も、その後でそれなりに活躍して「狭間の時代」に世に出てきていた。それがペンギンズである。

『おもしろ荘』出演時に芸歴2年目だったブルゾンちえみと違って、ペンギンズの2人は長いキャリアを持つ苦労人だった。アニキ(吉間洋平)とノブオ(ナオ)は、それぞれ別々のコンビとして活動していたのだが、ほぼ同じ時期にコンビを解散することになってしまった。そこで、再起をかけて2015年にペンギンズが結成された。

最初はオーソドックスな形の漫才を演じていたのだが、アニキが漫才中に真横を向いてしまう悪いクセがあり、そのせいで伸び悩んでいた。そこでアニキが横にいるノブオの方を向かない形の漫才をやればいいのだという発想に至り、「アニキ漫才」が生み出された。

キャラ漫才でブレーク

アニキ漫才では、強面のアニキが兄貴分のキャラクターを演じて、マイクの前で1人で話を進めていく。ノブオは彼を慕う舎弟キャラとして、アニキの後方に陣取り、アニキの話を盛り上げたり、フォローしたりする役回りを演じる。それぞれが個性的なキャラクターを演じるキャラ漫才だった。

キャラ漫才は、正統派の漫才に比べると賞レースでは不利だとされることがある。そのため、『M-1グランプリ』で活躍することを目指す芸人の多くは、キャラ漫才をやろうとしない。しかし、ペンギンズは不利を承知でその道に踏み込み、そのネタで見事にブレークすることができた。

彼らはバラエティ番組でもそのキャラクターのままでロケなどに出たりしていた。アニキが実は不器用でおとなしい天然キャラで、ノブオがしっかり者だったりする。演じているキャラクターと素顔のギャップもあって、そこが笑いにつながっていた。

お笑い不毛の時代に見事に結果を残したペンギンズの功績は、今の時代に改めて評価されてもいいのではないかと思う。

お笑いTVで、ペンギンズの動画を観る。