お笑いとアートの違い

お笑いとアートの違い

最近、野性爆弾のくっきーさんが脚光を浴びています。もともと、芸人やお笑いファンの間ではその才能は認められていたんですが、なかなか世に出るチャンスをつかめずに長い時間が過ぎていました。

 

くっきーさんが注目されるきっかけになったのは、やはりあの「白塗りものまね」でしょう。顔を白く塗って有名人になりきるあの強烈なパフォーマンスは、インスタグラムなどでも拡散されて話題になりました。

 

最近では、くっきーさんの作成した映像や絵画や立体作品を展示する展覧会も日本各地で行われていて人気を博しています。その展覧会は台湾でも行われ、その勢いは海外にまで波及しています。

 

最近、くっきーさん、ロバート秋山さん、渡辺直美さんなどが相次いで展覧会を開いています。いずれも多くの人を動員して大盛況になっているそうです。展覧会が話題になることで、彼ら自身の人気や注目度もますます上がっているのではないかと思います。

 

なぜそういうことが起こっているかというと、「お笑い」と「アート」の敷居の高さの違いだと思うんですよね。お笑いの芸というのは、人を笑わせるためにやるものだという前提があるから、見る側もどうしても「笑えるかどうか」という目線になってしまうんですよね。だから、自分が笑えないと感じたらそれだけで否定的な評価をしてしまいやすい。目的を笑いに絞り込むことでハードルが上がってしまっているわけです。

 

一方、「アート」ではそういうことがない。展覧会を見に行って「笑えないからダメだ」と怒り出す人はいないと思います。アートというのは、楽しみ方は人それぞれということになっているので、見る側が自由に楽しめるわけです。

 

本来、芸人がやっていることの中には「笑える」以外の要素もいろいろ含まれているはず。でも、本業のお笑いという世界の中では、笑えるかどうか以外の価値基準がないので、そこがどうしても評価されづらい。

 

そこで、芸人がやっていることを「アート」という枠に押し込めることで、新しい楽しみ方が広がり、その人のやっていることを純粋に楽しめるようになる、ということがあると思うのです。

 

プロの芸人の皆さんは、自分たちがやっていることは純粋なお笑いであり、だからこそ価値がある、と考えていることが多い気がします。だから、アートとして見られることを嫌がるような傾向もあります。でも、くっきーさんや秋山さんの例にもあるように、アートを一回経由することで、それを楽しめる人が増えて、結果的にその人の芸人としての評価も上がるということもあると思うんですよね。

 

お笑いという看板でもアートという看板でも戦えるくらい、プロの芸人の皆さんはとにかく「素材」が強い。素材の生かし方はいろいろあってもいいんじゃないかな、と思います。