とんねるずはここぞというときに「きめる」

とんねるずはここぞというときに「きめる」

『とんねるずのみなさんのおかげでした』が終了してしまいましたね。前身番組が始まってから30年の歴史が幕を閉じたことになります。

 

最終回のラストシーンで2人で『情けねえ』を歌うところは、やっぱり圧倒的に格好良かったですね。「楽しい」とか「面白い」もあるんだけど、それ以上に「かっこいい」と多くの人に言わせてしまうところが、とんねるずという芸人の最大の魅力ではないかなと思います。

 

とんねるずが出てきた頃に比べると、お笑い文化は世の中に広まって、芸人はたくさんテレビに出るようになって、お笑いそのものの地位は上がっているんですよね。ただ、その歴史の中でも、とんねるずみたいな芸人は出てきていないし、たぶんこれからもなかなか出てこないんじゃないかという気がします。

 

というのも、プロの芸人には「芸人の美学」みたいなものがあるんじゃないかと思うんです。それは端的に言うと「かっこ悪いことがかっこいい」というようなことです。笑いを取るためにどんなかっこ悪いことでも全力でやりきる、というのがやっぱり芸人としてはかっこいい。本来はそうだと思うし、とんねるずにもそういう側面がないわけではない。

 

でも、とんねるずは、ここぞというときには「かっこいい」という方向に迷いなく舵を切れるんですよね。そして、それがさまになる。この点がやっぱり破格なんですよね。

 

別の言い方をすると、「面白い」には本来いろいろな意味が含まれているけど、普通の芸人はその中で「笑える」という意味の「面白い」をどんなときも確実に取りに行く。そっちに全力で振り切るものだと思うんですよね。その感覚が鋭い人こそが優れた芸人である、という感じがある。

 

でも、とんねるずは、「笑える」以外の「面白い」も大事にしていて、いざというときにはそちらの方向に振り切って、見る人を圧倒して満足させる力があるんですよね。30年続いた番組の最後を歌で締めくくるというのも実にとんねるずらしいと思いました。

 

とんねるずが出てきた頃には、芸人なのにアイドルみたいに歌を歌ったり、俳優のようにドラマに出たりして、自由に領域をまたぎながら活躍する姿が新鮮だったのではないかと思います。でも、芸人全盛の今、改めて歴史を振り返ってみると、とんねるずは芸人として歌手や俳優をやっていたというのもちょっと違う気がします。つまり、とんねるずは初めから「芸人」という役割にすら縛られていなかったのではないか、と。芸人も歌手も俳優も、とんねるずにとっては同列で、ただ「人を楽しませる仕事」というだけだったのではないでしょうか。だから彼らは、あんなにも自由に人々を笑わせたり、驚かせたり、感動させたりすることができたのでしょう。

 

とんねるずは芸人の枠を超えた総合エンターテイナーであり、最後のテレビスターなのかもしれません。