新宿二丁目にバーを構えるゲイ芸人の語る「ゲイ(芸)への想い」とは?

新宿二丁目にバーを構えるゲイ芸人の語る「ゲイ(芸)への想い」とは?

今回お話を伺ったのは、ホリプロコム所属のお笑い芸人ユーマさん。二丁目から来たおネエ芸人としてステージでの芸風を確立しているユーマさんは、実際に新宿二丁目にバーを構える経営者としての一面も併せ持っている。そのユーマさんが、一体どのようにして現在のキャラクターを獲得したのか、出生の秘密に迫りたい。

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ーーー副業で新宿二丁目でゲイバーを二軒やっています。9割のお客さんは男女共にノンケの方で、今まで男女のカップル32組、8組は結婚までエスコートしました。とのことですが、詳しく伺っても宜しいですか?

 

ちょっと帽子被ってもいいですか?
写真撮られるなら。

 

ーーー大丈夫です。季節感があって良い帽子ですね。

 

あははは(笑)

 

お店をさせて頂いていて、うちはゲイバーなのに、ゲイがあまり来ないゲイバーなんですよ。新宿二丁目、同性愛者のホームでやってる筈なのに。

 

近年メディアなんかでゲイの人の露出が増えて、(それを観てる)みなさんが理解してくれてるっていう部分があって、二丁目っていう街自体にノンケさんが出入りするようになってきているんです。うちの店は9割はノンケさんで、皆さんのほうが出会いがあるんですよね。

 

例えば、いきなり二人きりでデートに連れていくとか、そういった男女の出会いは勿論あると思うんですけど、オカマを通すことで、私たちって、男の感性も女の感性も持ってるので、その間に入ることによってワンクッションになるんですよね。

 

お酒とともに、私が下ネタなんかも放り込むじゃないですか?それで女の子がくすくすって笑ったりすると、男からしたら「この女は結構下ネタいけるんちゃう?」みたいなことが分かるとか。男の方からだと最初のうちはそういう話し辛いじゃないですか。

 

いきなりふたりっきりになるより、オカマがワンクッションになることによって起こる化学反応みたいなのがあって、お店がきっかけで32組がカップルになりましたね。勿論、途中で別れたりした方もいらっしゃいましたけど、ご結婚も8組目が来月に。

 

ーーー8組が結婚ってすごいですよね。

 

出会いがお店っていうことです。

 

あとは、初デートで使っても上手いこといくんですよ。付き合う付き合わない以前の問題で、ちょっと男の下心じゃないけど「この子といい感じになりたい」みたいな時があるじゃないですか?そういう時、中に入ってるのがオカマだから安心できるんですよ。いきなりふたりきりになるよりも。

 

仲が良いサラリーマンのお客さんとかだと、事前に電話がかかってくるんですよ。「ちょっとユーマ、今から新しい女の子連れて行くから、どんな子か上手いこと話をして引き出して」と。男の前だと言えないけど、オカマの前だと本音で話してくれたり、人間性が見えてくる。その流れの成功率が高いんです。別途料金頂こうかと思うくらい。

 

それでね、その時は「上手く行くように盛り上げてよ」とか調子いいこと言っていた癖に、次に来た時はまた違う女の子連れてて「(前の子のことは)絶対言うなよ」とか。

 

もう男は勝手

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ちょっと、ここ撮って下さい!

 

ーーー分かりました(笑)差し付けなければ、お店の名前は?

 

一軒目は「バー 和(なごみ)」、二丁目の三丁目寄り、ダイコクドラッグとか大阪王将とか分かります?あそこからすぐです。

 

二軒目は「パニックハウス」、「ハプニングバーですか?」ってよく言われるけど、違いますからね。風俗店じゃないです。ゲイバーです。物件見つけようと思ったら、二丁目では今、中々見つからないんです。それで、空いたのが、一軒目の真横のビル。

 

―――すごい名前ですね。行くのが少し怖いというか。オープンなさってからどれくらいなんですか?

 

恥ずかしいんですよ。申請するときの契約書とか、区役所とか税務署の時めっちゃ恥ずかしい。「申請内容、読み上げさせて頂きます。えー、屋号名、パニックハウスさん」「はい!」って、すごい軽やかな返事で。

二軒目が半年、一軒目が三年くらいですかね。

 

ーーーお店が先なんですか?お笑い芸人が先なんですか?

 

ずっと芸人自体はやっていたんです。自分のお店を持つようになるまで3年半くらいなんですけども、今はホリプロさんにお世話になって2年目くらいで、ちょうどお世話になる少し前くらいから、ゲイであることをカミングアウトして舞台に登り始めたんです。

 

ーーーそれまでは隠して芸人をしていた?

 

そうなんです。だからどっちが先かと聞かれると何とも………

ゲイとしてカミングアウトして舞台に登り始めたのと、お店は同時くらいかも知れないですね。それまでは違うゲイバーで働いたりしていました。

 

ーーーカミングアウトしたことには何か理由なりきっかけが?

 

芸人っていう中の話で言うと、ずっと隠してやってて、今の芸能界こそゲイとかおネエとひとって当たり前に居ますけど、まだ芸人の世界だと、ゲイの人って各事務所に一組くらいしかいないんです。

 

隠してやってる時に、普通に漫才をしていたんですね、それで、僕は男っていう設定ていうか、男の人として「女にモテたいなあ」みたいなことを漫才の中で言うんです。そういうことを無理やりやってたんですよ。でも、自分じゃあ男の感性には勝てない。リアルさがない。こんなことやって、薄っぺらい笑いで、お客さんに届かないなあと思って。心底本音で、感性で漫才をやってるひとがめちゃくちゃ羨ましくて。男芸人も女芸人も。

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それで、オカマっていうのは挑戦だけど、やってみたらどうなのかなあとか。やっぱ芸人って男社会だから、隠してやって来た人間関係とかも崩れるのが凄い嫌なんです。迷惑掛けるとか、逆に気を使わせるんじゃないかとか。それなら隠したままの方がとか。でもずっと鳴かず飛ばずだったから、一回正直な自分でやってみようと思ったんです。

 

ーーーその時は別の事務所だった?

 

何個か転々と。時にコンビですが、基本的にはずっとひとりですね。

 

今はすごい自由に、伸び伸びやらせて頂いて、毎日楽しいですね。正直な自分でやれることが、この時代に生まれてきて、ラッキーだったなあと思います。

 

今は(ゲイを公言することが)普通じゃないですか?

 

でも、まだオカマオカマっていってご飯食べさせて貰えてる人間は本当にごく一部で、殆どユーマの友達なんかも二丁目では「ゲイです」って言ってるけど、月から金曜日はみんなサラリーマン、8割以上がそう。みんな隠してるんです。あとは親御さんとかにカミングアウトしてるひともいるけど、殆どがまだまだ出来ていない。

 

親との兼ね合いがね、一番大変なんです。友達なんかも見てて、長男で地方から出てきてる子で、実家が家業やってるのが一番たちが悪い。そういう子が何人かいるんですけど、田舎の人は理解が出来ないんです。この前も京都の子で、実家がタクシーのメーター造る会社やってて、偽装結婚したんですよ。「形だけでも欲しいんだ」って。東京で伸び伸び自分の好きなことして働いてたんですけど、そういう時期になったら戻らされて。「社長がオカマや」ってなったら、世間的に困るから、って。

 

ーーーまだ理解が追いついてないんですよね。

 

地方は狭いから、噂は広がるし。正直に生きることが幸せなのか、親のためになることを選ぶのがいいのか、わからないですよね。

私なんかこうオカマオカマ言って、楽しいよね。

良い悪いでなく。

 

ーーー店に行きたくなっちゃいましたね。

 

来てください。
全然。いつでも待ってます。

 

ーーーお店で潜入レポートみたいなことをしたいですね。

 

よくロケとかで使わせて頂いていますよ。
ノンケの方も多いので、初心者向けになると思います。

 

―――ありがとうございました。