アンガールズ デビュー当初から完成されていたキモキャラがヒットした理由

アンガールズ デビュー当初から完成されていたキモキャラがヒットした理由

自分たちへの鋭い客観的目線

芸人が人を笑わせる上で重要なのは「自分に合った型を見つける」ということだ。お笑いを始めたばかりの頃は、これができなくて苦労する人が多い。

面白いことを考えて面白いことを言う、というのはお笑いの根本にあるものであり、当然重要なことである。しかし、芸人がネタを演じるときには、単に面白いことを言えばいいというものではない。

同じネタを演じても、同じボケを言っても、やる人によってウケ具合は変わるし、観客に与える印象も変わる。ネタは文字で書いて人に読ませるものではなく、芸人が自らの体を使って表現するものだ。だからこそ、自分がそのネタを演じると観客にはどういうふうに見えるのか、ということを絶えず意識しなければいけない。自分に対して客観的な目線を持っている必要があるのだ。

芸人の仕事とは「面白いことを考えること」と「それを面白く表現すること」である。後者の部分が実は最も難しい。自分に合ったやり方を見つけるまでには、長い時間がかかるのが普通だ。

「ジャンガジャンガ」で人気に

しかし、ごくまれに、早い段階でそれを見つけられる天才的な芸人がいる。アンガールズはその典型例である。彼らの芸はデビュー当初から完成されていた。

世に出てきた頃のアンガールズは、その圧倒的なキャラの強さで注目された。痩せすぎのガリガリ体型の男性2人が、なよなよした話し方で脱力系のコントを演じる。ショートコントの間をつなぐ「ジャンガジャンガ」というパフォーマンスも話題になった。おしゃれな衣装を着ていた彼らは「キモかわいい」と言われ、女性人気も高かった。

世間的には、当時のアンガールズはいかにもキャラ先行型の芸人に見えたかもしれないが、実はネタがよくできていて面白かった。彼らは自分たちのキャラクターをよく理解していて、それに合ったネタを演じることができたからこそ、すぐに売れっ子になることができたのだ。

キモキャラを全力でまっとうする

その後、ブームが落ち着くと「キモかわいい」から「かわいい」の要素が抜け落ちてしまい、特に田中卓志の方は単なるキモいキャラとして扱われるようになった。本人も最初は戸惑いを感じていたが、「これだけキモいキモいと言われるなら、言われっぱなしで終わるわけにはいかない」と思い、開き直るようになった。

そこからは、あえて気持ち悪さを強調するような話をしたり、スタジオ収録中に女性客ばかりの観覧席に飛び込んだりするようになった。この思い切った居直りの精神こそが、田中をキモキャラ芸人として不動の存在にした。

しかし、そんな中でも彼は黙々と腕を磨いていた。最近では知性派の一面が徐々に注目されるようになり、ネタ番組で解説役として的確な評論をしたり、お笑いコンテストの審査員を務めたりするようになった。

2022年4月には『呼び出し先生タナカ』というゴールデンタイムの番組でMCを担当することになった。自分たちがどう見えているかということを冷静に分析して、黙々と牙を研いでいた彼が、ついにテレビという舞台の中心で脚光を浴びることになった。

アンガールズのキャラクターは少しずつ変わっているように見えるが、本質的にはそれほど変わっていない。彼らに対する世間の見方が変わっていくのに合わせて、その見せ方を巧みに変えているだけなのだ。

お笑いTVで、アンガールズの動画を観る。