意識高い系社長のせいでバイク便のバイトを1日で辞めた男

意識高い系社長のせいでバイク便のバイトを1日で辞めた男

今回お話を伺ったのは、トゥインクル・コーポレーション所属のお笑い芸人・シロたろしさん。意識高い系社長のせいで被ったヒドいバイト経験とは?

「かなり昔に、バイク便のバイトを1日だけやったことがあるんです。そのときの僕は、自動二輪じゃなくて原付免許しか持っていなかったんですけど、募集のチラシを見たら『50ccでも可』って書いてあって。ちょっとやってみようかなと思って応募したんです。時給も良かったし、時間の融通も利くと思ったので。それで、初めて出勤したら、マンションの1室みたいなところに事務所があって、そこからみんな配達に行くんですね。初めてなので朝の挨拶をしたら、『ああ、今から研修をするから』と言われて、他の人たちが出て行ってから社長さんみたいな人とふたりきりになったんです。

 

バイク便って思っていたよりも忙しくて、ずっと電話が鳴っていて、事務所にいる社長が『ああ、どこそこですね』みたいな感じでマッピングしていくんです。それで、それを外に出ているバイク便の人たちに随時指示を出すんです。ちょっとした指令室みたいな。だから、社長は忙しくて、僕は一向に研修をしてもらえないんです。『いつになったら始まるんだろう』と思っていると、その人、何というか、今で言う『意識高い系』の人だったんですね。注文が混んできたタイミングで、『くそお、くそお、こんなもんじゃねえだろ』『俺、こんなもんじゃねえだろ』って呟き出したんです。すぐ近くに僕がいるのに『ちきしょう、がんばれ俺! もっと頑張ればできるだろう!』みたいに。

 

でも、自己啓発している割に混乱していて、徐々に指示がめちゃくちゃになっているんです。バイク便に対しても『あそこ行って、あそこ行って。……いや、やっぱりあそこね』という具合で。でも、自分には『大丈夫、俺なら大丈夫だ』って言い聞かせてるんです。そうしたら、突然にその社長が僕の方を見て、『しろた君、いけるな?』って訊いてきたんです。『いけるも何も、何にも教わってないんですけど』って言ったら、『大丈夫、封筒持ってどこそこに行くだけだから』『どこそこに行ってピックアップして、どこそこに持っていくだけだから』って。

 

しょうがないから行くしかないじゃないですか? 地図を見ながら何とか一件配達をこなしたんですね。それで、もう戻っていいのかなと思って事務所に電話かけたんですよ。そうしたら、『ごめん、ちょっとそのまま勤務入って』って。研修を受けてないうえに原チャリなのに実戦投入。そこから、もう1日中働かされて。しかも、原チャリだから高速とか乗れないじゃないですか。なのに、高速を通らないといけないところに行かされて、『これ高速なんですけど』って伝えたら、『何とかなんないの?』って言われて……。

 

結局その荷持だけは運べなかったんですけど、朝の10時から夜の9時くらいまでずっと出ずっぱりで働かされて、事務所に帰ってすぐに『辞めます』って言いましたね。しかも、研修を受けていないのに『研修期間はバイト代ないから』ってことでお金をもらえなくて、今思えば請求すればよかったと思うんですけど、まだ20歳くらいだったので泣き寝入りしてしまいましたね。最近は見ないですけど、それから10年くらいは普通にそのバイク便を見掛けたので『まだあいつが自己啓発しながら指示出してんのかな』って、見るたびにムカついてましたね」