高校球児の僕が伝説的な名監督から贈られた言葉
今回お話をうかがったのは、グレープカンパニー所属のお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸さん。高校球児だった彼の青春時代のほろ苦い思い出とは?
「僕と相方は 愛媛県の済美高校っていう甲子園の常連校の出身で、僕らも野球部だったんです。当時の監督は上甲正典さんという方で、就任1年目に全国制覇を果たしたスゴい人だったんです。ただ、めちゃくちゃ変わった人だったんですよ。監督は部員の中にオキニ(お気に入りの選手)を何人か決めていて、そいつらのことは孫みたいにかわいがるんです。全然怒らない。それで、僕もオキニの1人だったんですけど、僕だけはなぜか『嫌われオキニ』と言われていて。『一番気に入られているけど一番怒られる』という得だか損だか分からない立ち位置だったんです。何か問題が起きると、真っ先に僕が文句を言われるんです。期待の裏返しだったのかもしれませんが、誰よりも怒られていた自信がありますね。
うちの高校では、公式戦の前日はホテルに宿泊するっていう決まりがあったんです。それで、あるとき、僕がホテルのロビーでポカリスウェットを飲んでいたら、たまたま監督が通りかかって、僕を見つけた瞬間に大激怒したんです。ホテル中に響き渡るような声で『何してんだ、お前ら!』って。それで全部員が集められて、説教タイムですよ。『ポカリスウェットというのは糖質がすごいんだぞ。こんなん飲んだら、次の日動けんやろ。試合の前日に飲んでいいのは、ウーロン茶かカルピスだけや!』ってキレたんです。『いや、カルピスも糖質あるだろ』って内心みんな思っていたんですけど、当の本人は至って真剣で、普段からカルピスを勧めてくるんです。
ほかにも、夏の熱中症予防としてお医者さんに『塩分をしっかり摂ってください』と言われたのを監督なりに解釈して、紙コップの半分まで塩を入れて、そこに水を注いで混ぜたものを部員たちに飲まそうとしてきたんです。単なるめちゃくちゃ濃い塩水ですよ。みんな飲んだふりをしてこっそり球場の土手に捨てていたんですけど、僕だけは嫌われオキニだったから、見逃してもらえませんでした。
僕の代は県大会の決勝でサヨナラ負けしてしまって、甲子園に行けなかったんです。監督はその試合前の最後のノックで使ったボールを3年生に1つずつ渡して、全員に一言ずつ言葉をかけてくださったんです。たとえば、キャプテンは『念ずれば花開くや。お前が念ずれば、必ず花開く。これを覚えておいてほしい』と言われていました。それで、僕の番になったら、『おお、高岸か。お前が野球をやるときは、お前が野球をやるときや』って言って渡されたんです。『え、どういうこと!?』って。深い話かと思ったら全然深くない。あまりにもシュールすぎて全員がずっこけましたね」