(仮)バラシ芸人=愛人
5月10日に放送された『アメトーーク!』のテーマは「(仮)バラシ芸人」でした。これがなかなか面白かったんですよね。「バラシ」というのは業界用語で、決まっていた仕事がキャンセルになることを意味します。「(仮)バラシ」というのは、もともと確定かどうか分からない「仮」の形で入っていた仕事がキャンセルになってしまった、ということです。
そもそも不確定な「仮」という形で入っている仕事ですから、それがなしになってしまうというのは日常的にあることだと思います。しかし、そうは言っても、いったんその仕事のために予定が確保されていて、そのための準備もしているわけですから、タレントにとってはこれがつらいことだというのはよく分かります。
麒麟の川島明さんが、(仮)バラシされる芸人のことを「都合よく遊ばれる愛人」に例えていましたが、まさにそんな感じなのでしょう。仮が仮ではなくなって確定することもたまにあるからこそ、仮に望みをつなぎ、仮に裏切られて涙することになるのです。
『アメトーーク!』では「ひな壇芸人」以降、この手の業界内だけで通じる慣習やルールなどをネタにすることがたまにあります。こういう企画は、テレビの向こう側にいる人たちが舞台裏を少しだけ覗かせてくれるような感じがして面白いですよね。
そして、「ひな壇芸人」以来、こういう企画で力を発揮するのが品川庄司の品川祐さんです。分析力に優れているだけでなく、それを面白く加工して伝える腕もある。特に「おしゃクソ事変」で有吉弘行さんにガツンとやられてからは、ネガティブ系の企画で悲しげに笑いを誘うのが妙にさまになっています。
(仮)バラシをマネージャーから告げられる瞬間の芸人の姿を捉えたドッキリ企画も面白かった。映像的には地味ですが、芸人側からは最も見られたくない瞬間ではないでしょうか。精神的にくるタイプのドッキリですね。
『アメトーーク!』で毎週ひな壇に座っている数人の芸人の向こう側には、知られざる無数の「(仮)バラシ芸人」が眠っている。そう考えると、普段の番組をさらに味わい深く楽しめるようになるかもしれません。