タイムマシーン3号 『有吉の壁』(日本テレビ)出演をきっかけに新たなステージに到達した誇るべき「素人ウケ」

タイムマシーン3号 『有吉の壁』(日本テレビ)出演をきっかけに新たなステージに到達した誇るべき「素人ウケ」

「素人ウケ」から「万人ウケ」へ

あまり表立って言われるようなことではないが、プロの芸人が生み出す笑いには「素人ウケ」と「玄人ウケ」の2種類がある。一般の観客にウケるのが「素人ウケ」であり、同業者の芸人や業界人を笑わせるのが「玄人ウケ」である。

もちろん、両方を笑わせるのに越したことはないし、一流の芸人はそれを実現させているものなのだが、ほとんどの芸人はどちらかに特化しているものだ。素人ウケする芸人は同業者からは評価されなかったりするし、玄人ウケする芸人は一般客からは思うように笑いが取れなかったりする。

この分類で言うと、タイムマシーン3号は長い間「素人ウケ」に特化した芸風を貫いてきた。『爆笑オンエアバトル』など、一般人が審査する番組では無類の強さを発揮していたのだが、『M-1グランプリ』などのプロが審査するコンテストではなかなか結果を出せなかった。2005年には『M-1』の決勝に進んだが、7位という順位に終わっている。

客に媚びて迷走したことも

彼らが『オンバト』で高得点を獲得していた理由については、のちに『しくじり先生』などでも語られていた。彼らは『オンバト』で観客から票を得るための方法を徹底的に分析し、観客に嫌われないことを心がけていた。それだけを考えてなりふり構わず戦ったことで、彼らは活躍することができたのだ。

しかし、観客に媚びて笑いを取ることに慣れてしまった彼らは、自分たちのスタイルを見失ってしまい、迷走を続けることになった。『M-1』などの大きな大会で評価されるのは、自分らしさを貫いたネタだけだった。タイムマシーン3号の2人はそれをなかなか見つけられず、試行錯誤を重ねていた。

そんな彼らに転機が訪れた。2013年、彼らは事務所を移籍して、お笑いの老舗である太田プロダクションに入った。そこには、有吉弘行をはじめとして、数多くの先輩芸人がいた。それまでにない新しい環境に飛び込んだことで、彼らの意識も変わっていった。

『有吉の壁』でも注目される

成果はすぐに出た。2015年の『M-1』では決勝進出を果たして、優勝こそ逃したものの高い評価を得た。2016年には『キングオブコント』でも決勝に進んだ。自分たちのネタが玄人ウケしないことにコンプレックを抱えていた彼らが、ようやく殻を破ったのだ。

最近では『有吉の壁』(日本テレビ)出演がきっかけとなって、人気も上昇している。YouTubeチャンネルも好調で、すっかり人気芸人の仲間入りを果たした。

そもそも、芸人の芸とは観客の前で披露されるものであり、観客にウケること自体は誇るべきことであり、何も恥じることはない。ただ、「玄人にウケない芸人は一人前とは言えない」というような感覚が業界の中である程度まで共有されていることも事実であり、彼らもその呪縛に苦しめられてきた。

そこから解放されて、いい意味で開き直れたことで、タイムマシーン3号は新たなステージに到達した。「素人ウケ」は彼らの弱みではなく強みである。今後はその地位をますます盤石なものにしていくだろう。

お笑いTVで、タイムマシーン3号の動画を観る。