映画芸人が教えてくれる「今オススメの映画トップ5」

今回お話を伺ったのは、お笑いコンビ「ジャガモンド」の斉藤さん。お笑い界でも随一の「映画通」であるという斉藤さんが教えてくれる「今おすすめの映画トップ5」とは!?

5.『用心棒』

1つは、黒澤明の「用心棒」という映画がです。なんで推したかといいますと、やっぱりこの、邦画が誇る映画のジャンルって時代劇だと思うんですよ。その中で、「七人の侍」ももちろん面白いんですけど、他の監督さんの時代劇も面白いんですけど、1番とっかかりやすいのが「用心棒」で、見てもらうとどんどん深みにはまっていくというか、良さがすごいでるので、みんながいいなって思ってくれて。あと、三船敏郎がやっぱりいいんですよね。当時の俳優さん、今も時代劇たまにありますけど、みんなやっぱり顔が小さい人がタレントさん。昔って、失礼ですけど顔が大きめの人とか、甲冑とか和服が合うんですよねしかも、古さを感じないので、今見てもちゃんと面白いし、日本にもこんないい映画があるんだっていう。時代劇というジャンルで『用心棒』ですかね。

4.『怒り』

あとは、これも1本邦画なんですけど、最近でいうと「怒り」っていう映画がです。渡辺謙さんがでてまして、僕のケイダッシュステージのグループの渡辺謙さんがでてるんですけど、それで推してるわけじゃないんですけど、「怒り」は多分まだ劇場公開されてる途中なのでDVDとかにはまだなってないんですけど、原作ものでそれを映画にしたんですけど。僕は原作も読んで映画も見たんですけど、まず原作を映画化するってよくあるじゃないですか。でも、そういう色んな原作もの映画の中で秀逸というか、1位ぐらい。というのは、原作のいじり方がすごくうまくて、内容は一緒なんですけど、オムニバスという3箇所でバラバラの登場人物たちが群像劇のように繋がっていく話なんですけど、順番を間違えると一気にわけわからない話になっちゃうんですよ。「今どこの誰の話だっけ?」ってなっちゃうんですけど。小説でも実際読んでて、「あれ?これはどこだっけ?」みたいな。ですけど、映画は、例えば1個のシーンの最後の台詞が、次のシーンのバトンになってて、スッと次のシーンにいって、次のシーンの最後も、例えば食事の話だったとしたら、ちゃんと食事の話が3箇所繋がってたりするっていう繋がりとかがあって、これも見事だなっていうところですね。

八王子で一家殺人事件が起きて、犯人が逃走するんですけど整形しちゃうんですよ、犯人が。似顔絵がでるんですけどわからない。今どこにいるかわからないってなった時に、東京と千葉と沖縄で3箇所で、犯人にそっくりな男の人が突然、しかも所在不明身元不明の3人がいきなり現れて、土地のひとたちと仲良くなっていくんですけど、だんだん指名手配のニュースとかが流れ出して、「あれ?もしかして、いきなり現れたけど僕が信じてたこの人は殺人犯なんじゃないか?」っていう疑いを3箇所で同時に疑い始めるんですけど、最後の方で一応真犯人はいてっていう。市橋容疑者っていたじゃないですか?あれがモデルになってるみたいで、そういうバックボーンはなかったんですけど、整形して逃げたりとか。こんなのいうのあれですけど、その顔も市橋容疑者にちょっと似てる、綾野剛と、松山ケンイチと、森山未來。………似てるんですよ。このチョイスもなかなか絶妙じゃないですか?そこも相まって、これはめちゃめちゃいい作品ですね。

3.『マッドマックス 怒りのデスロード』

あとは、洋画の方にいかせていただくと、1本は「マッドマックス 怒りのデスロード」。なんていうんですかね。911以降でアメリカの映画って作り方がちょっと変わったというか、勧善懲悪っていうより、911、イラク戦争のこともあって、アメリカが持ってる正義というものがブレてるというか、簡単に正義だよって言えないような情勢ってあったんですよね。ベトナム戦争の時もそうですけど、要はアメリカが正義、相手が悪と割り切ることがちょっとできなくなってるというか。まさに911以降の、例えばアメコミのヒーロー映画とかも、バットマンとかも内容は昔のものと変わったりしてて、時代を結構反映させてるものになってるというか。その中で、そういうのも映画なんですけど、見ててストレートにスカッとする気持ちいい娯楽映画ってなかなかでなくなっちゃったなという印象があって、その中で「マッドマックス 怒りのデスロード」っていうのは、本当にシンプルなんですよね。

「行って帰ってくるだけ」っていう映画なんですよ。ディストピアの世界で、要は文明が滅んじゃった地球で独裁者が現れて、宗教じみたことでみんなを洗脳していくんですけど、そこから子産み女って言われる独裁者が子供を産むためにいる女性が、奴隷がいるんですけど、その女性たちを逃す話っていう。これもやっぱり、宗教観ある敵も悪ではないというか、「その時代に止むを得ず生まれてしまったもの」っていうところも含めて、完全な善悪でもないし、かといって、とにかく見て欲しいんですけど、ずっと車がでるカーアクションがあるんですけど面白くて、僕は映画館でこんな面白いものがあっていいんだって感動して涙が出たんですよ。多分、まだ立川で爆音上映会といって映画館でまだやってるので、これは見て欲しいですね。

2.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』

もう1本が、これもアメリカの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」っていうアメコミ映画なんですけど、今アイアンマンとかスパイダーマンとかキャプテンアメリカとか「アベンジャーズ」といって集合するような映画があって、マーベルシネマティックユニバースといって一連の世界観の中で単体の映画をやってて、たまに集合してみたいなことをマーベル映画はやってるんですけど、アイアンマンとかスパイダーマンってもうアメリカ人はみんな好きなキャラクターというか、みんなお馴染みなんですけど、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」というのは、5人悪党がいてならず者悪党たちが銀河のために戦うっていうシンプルな話なんですけど、2年前かな。公開当時誰も知らないんですよ、この5人のキャラクターを。「誰これ?」みたいな。だから、インパクトないんですよね。例えば「スパイダーマン」新作でましたってなったら、スパイダーマンすごいってなるんですけど、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の場合は、全然知らない、たぬきとかも混じってるんですよ、しかも。だから、「なにこのB級感?」みたいな感じで、みんな先入観があるんですけど、見るとめちゃめちゃ面白くて。

簡単に言うと、地球で幼少だった男の子が、お母さんが病気で死ぬシーンから始まるんですよ。そのお母さんは、幼い息子にテーププレーヤーをプレゼントしてて、お母さんが定期的にテープをプレゼントする。自分で作ったリミックスみたいなものを。お母さんが死ぬ間際に最後テープを1本渡されるんですけど、息子はお母さんの死を受け止めれず、その場から逃げちゃうんですよ。母の死を見届けずに。病院の外にでると上から宇宙船が現れて拉致されて、その10年後みたいな話に飛ぶんですね。飛ぶと、その主人公が、トレジャーハンターみたいな盗みを働く悪者になってまして、粋なのが母親から地球でもらったテープレコーダーをヘッドセットで聞きながらトレジャーハンターをするっていう、映画史に残る最高のオープニングがあるんですけど。これもさっき言った、911以降でなかなか「正義とはなんだ?」「悪とはなんだ?」とかって入り組んでる作品が多い中で、単純に笑えるし面白いしわくわくするし泣けるっていうエンターテイメントが詰まった1本になってますね。これはおすすめです。

1.『死刑台のエレベーター』

ラストはフランス映画なんですけど、「死刑台のエレベーター」という映画がありまして、これが1955年とかかな。フランス映画って「映画好きがフランス映画好き」っていうのをよく、あるあるというか。僕ちょっとそういうの抵抗があって、「フランス映画見てないんじゃ映画好きじゃない」みたいなことを言う人いるんですよ。そういうの僕嫌いなので、見ないようにしてたんですけど、でも死刑台のエレベーターって1回、日本映画で吉瀬美智子さんとかがリメイクしたりとかしてて、それでもと見てみようと思って見てみたら、サスペンス映画なんですけど、ある会社のめちゃめちゃ裕福な社長に若い奥さんがいるんですけど、その奥さんと不倫をしちゃうのが、その会社の社員なんですよ。冒頭でその社長をピストルで殺して、自殺に見せかけて奥さんと逃避行しようとするっていう計画があったんですね。冒頭で社長殺されるんですけど、ひょんなことから主人公の青年はエレベーターで帰るんですけど、途中でビルの電源が落ちてエレベーターからでれなくなっちゃうんです。だから主人公を待ってる、殺された社長の奥さんとかは、なんででてこないのかわからなくて、逃げられたって思っちゃったりしたり、あとは主人公が持ってた車とかが実は悪用されて二次被害で別の殺人が起きちゃったりするんですよ。主人公の青年がエレベーターからでたら、自分はずっとエレベーターにいたはずなのに色んな事件が起きてて、社長殺しじゃなくて別の人が起こした殺人の容疑者になってるっていう。

で、どうなっていくかっていう話なんですけど、よくあるボタンの掛け違いのミステリーみたいな感じで、邦画でも結構そういうのがあるんですけど、そういうのよりも全然良くて。なんでかというと、シンプルというのもあるんですけど、音楽がジャズで即興で弾いたピアノの音楽を映画にそのままいれてて、これがめちゃめちゃお洒落で。サスペンスではあるんですけど皮肉な展開もあるし、いったらコメディーじゃないですか?ボタンの掛け違いって。だけど、それが笑いとかじゃなくて、お洒落な悲劇みたいな感じになってまして。こんな贅沢な映画ないなっていう、これも90分ぐらいでブルーレイも出てるんで、めちゃめちゃオススメな1本ですね。