ゆってぃ 自虐的なのにどこかカラッとした明るさで一点突破したキャラクターの魅力とは?

ゆってぃ 自虐的なのにどこかカラッとした明るさで一点突破したキャラクターの魅力とは?

自虐ネタで才能が開花

芸人の重要な仕事の1つに「ハードルを下げること」がある。「油断させること」「なめられること」と言い換えてもいい。笑いを生むために必要な下地作りの作業である。

人を笑わせるためには予想を裏切ったり、期待を上回ったりしなければいけない。これから面白いことが起こるはず、と期待に胸を膨らませている相手を笑わせるのは容易なことではない。

だからこそ、芸人は意図的になめられやすいポジションをとり、ハードルを下げようとする。あえて低くしたハードルを鮮やかにとび越えてみせることで笑いが生まれるのだ。

基本的には、ハードルを下げるには技術が必要なのだが、お笑いの世界にはこの分野の天才というのも存在している。なめられやすさは一種の才能であり、これを持っている人は重宝される。ゆってぃは、ピン芸人になることでその才能を開花させた珍しいタイプだ。

『爆笑レッドカーペット』で活躍

彼はもともとマンブルゴッチというコンビで活動していた。その時期は、見た目も芸風もいかにも当時のおしゃれな若者という感じだった。コンビ解散後、ゆってぃはピン芸人として再スタートを切った。

ここでネタ番組に出るために新しいキャラクターを開発した。それがスーパーアイドルの「ゆってぃ」だった。80年代アイドル風の派手な衣装に身を包み、自虐ネタ中心の漫談を披露した。話と話の間をつなぐブリッジとして「ちっちゃいことは気にするな、それ、ワカチコ、ワカチコ!」というフレーズを作った。当時の人気番組『爆笑レッドカーペット』でこのキャラクターが大当たりして、ゆってぃは一躍スターダムに躍り出た。

どちらかというと気取った二枚目キャラだったコンビ時代から、180度方向転換したようなこのキャラクターこそが、ゆってぃという人物の本質に近かった。彼は人当たりが良く、芸人仲間からも愛されている。そんな人間味の部分がにじみ出ているネタだからこそ、自虐的なのにどこかカラッとした明るさがあり、気兼ねなく笑えるようなところがある。

「一発屋」扱いも巧妙に回避

ゆってぃは一時的なブームに乗ったものの、瞬間最大風速はそこまで高くなかったため、一発屋という悪いイメージが定着することもなかった。そのため、ブームが落ち着いてからもそれなりに安定して仕事を続けてきた。こういう人こそがお笑い界の真の勝ち組である。

ネタの面白さに定評がある芸人が多いプロダクション人力舎という事務所の中でも、キャラクターだけで一点突破したゆってぃは異色の存在だ。「栄光なき天才」とはこういう人のことを言うのだろう。

お笑いTVで、ゆってぃの動画を観る。