
第14回 一発屋芸人が消えていく理由

お笑いの世界には、「一発屋」と呼ばれる人たちがいる。何らかのきっかけで急速に売れっ子になって、その後あっという間に消えていってしまう芸人のことだ。最近は、テレビに出る芸人の多くが、芸人同士でお互いを話のネタにして盛り上がるような場面が目立つ。そんな風潮の中で、元・猿岩石の有吉弘行が、自分が一発屋だった過去を自嘲気味に語ったことで、テレビの中で「一発屋」という単語が今まで以上によく使われるようになり、一発屋芸人そのものが企画の題材として取り上げられる機会も増えた。
一発屋というと、世間ではかなりネガティブなイメージがあるかもしれない。だが、お笑い界の競争が激化している現状では、たとえ一発であっても売れたことのある芸人はそれだけで選ばれた存在である、とも言える。これだけ芸人の数が増えている状況下では、ほとんどの若手芸人は、テレビに一度や二度出たところで、それほど幅広い層から認知されるわけではない。その点、一発屋は、お笑いファン以外の「世間」に届いた実績を持っている。それはとても貴重な経験なのだ。まずは一度「売れる」「ブレイクする」という状態を経て、そこから一発屋になるか、末永く活躍するお笑いタレントになるか、というふうに道が分かれてくる。
それでは、一発屋として消えていく芸人と、そうならずに長く生き残る芸人の違いは何なのか。島田紳助によると、その鍵は「自分が売れた理由をわかっているかどうか」にあるという。自分が売れた理由をきちんと理解できている人間は、それに基づいて次の戦略を立てることができるので、消えるはずがない。ただ、たまたま売れてしまっただけで、その理由を把握できない芸人は、何もできずにそのまま消えてしまうというのだ。それはすなわち、自分がどういうタイプの芸人であり、それをどう生かしていくのかというセルフプロデュース能力が最後にはモノを言う、ということである。
テレビの影響力が強い現代においては、テレビに出なくなった芸人は自動的に「一発屋」というレッテルを貼られてしまう。だが、芸人とは本来、テレビに出ないから消えたというような単純なものではない。彼らの仕事はテレビの中にだけ存在しているわけではないのだ。いわば、テレビというメディアが一発屋を生んだという側面もあるのだ。
お笑いを志す者ならば誰でも「売れたい」という思いは持っているものだ。ただ、本当に重要なのは、売れた後にどうするのか、ということだ。一発屋になるかどうかの分かれ道はそこにある。
ラリー遠田(らりー・とおだ)
おわライター、お笑い評論家。雑誌やブログを通じてお笑いに関する分析、評論活動を行っている。
主な著書:
・『この芸人を見よ!』(サイゾー)
・『THE 芸人学 スゴい!お笑い 戦国時代をサバイバルする30人の成功法則』(東京書籍)
ブログ:おわライター疾走







