
第9回 漫談は笑いの王道

お笑い芸人が1人で演じる芸には、さまざまな種類がある。ピン芸の日本一を決める大会「R-1ぐらんぷり」を見てもそれは明らかだ。1人コント、ものまね、歌やダンスなど、それぞれの芸人がそれぞれのやり方で笑いを取ろうとしている。
だが、そんな多様なピン芸の中でも、最もシンプルで基本的なものといえば、何と言っても「漫談」だろう。手ぶらで舞台に上がり、自分のしゃべりだけで笑いを取る。ただ面白い話をして観客を楽しませればそれでいい。漫談こそは、お笑い芸の最もシンプルな形であり、お笑い芸の究極型とも呼べるものだ。
例えば、アメリカなどでは、コメディアンが1人で舞台に立って面白い話を披露するのは、「スタンダップコメディ」と呼ばれるメジャーなお笑い芸である。だが、日本では、似たようなことをやっている人があまり多くない。「落語」という別の形の伝統的な話芸が、独自の形で発達しすぎたということも関係あるのかもしれない。
ただ、落語であっても、ネタに入る前の「マクラ」と呼ばれる部分では、ネタにスムーズに入るための導入として面白い話をする必要があり、これはいわゆる漫談に近いと言ってもいい。いわば、ピン芸をやる人間ならば、たとえ落語家であっても、ある程度は漫談の技術を求められるものなのだ。
最近ではテレビでも「すべらない話」など、芸人のシンプルなトークで笑いを取る力が再評価されつつある。漫談力がある芸人は、小道具や衣装やセットに頼らず、自分の体ひとつで笑いを巻き起こすことができる。テレビの制作費削減に伴って、元手のかからない芸人の「漫談力」がいっそう求められるようになってきているのだ。
漫談は、シンプルであるがゆえに奥が深い。しゃべりで笑いを取る能力は、司会業でもバラエティでも営業でもライブでも、いかなるときにも必要とされるものだ。漫談は、すべての芸人が一度は通る笑いの王道なのだ。
ラリー遠田(らりー・とおだ)
おわライター、お笑い評論家。雑誌やブログを通じてお笑いに関する分析、評論活動を行っている。著書に『松本人志はなぜ人に媚びず自信満々に成功し続けるのか』(遠田誠著、あっぷる出版社刊)がある。
ラリー遠田著『この芸人を見よ!』(サイゾー)11月30日発売
ブログ:おわライター疾走







